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THE MAKER’S WORK|紀州本庄うめよし

梅を見て、今日を決める

紀州本庄うめよし、畑から始まる梅酒づくり

アイボリー色の紙に描いた梅の実と葉のオリジナル水彩イラスト。

「あと一日待つか、今日採るか」

和歌山県みなべ町に本社を置き、梅を育て、梅干しと梅酒を造る紀州本庄うめよし。代表取締役の山西善信さんは、書面取材で、梅酒づくりに欠かせない判断をこう表した。

同じ木になった実でも、熟し方はそろわない。色や艶、触れたときの柔らかさ、香りを確かめ、収穫する日を決める。その後も、いつ、どのような状態で仕込むかを考える。

梅農家が梅酒を造る意味は、原料を自分で育てていることだけなのだろうか。山西さんの話をたどると、畑で身につけた判断が、仕込みの仕事にも、人との付き合いにもつながっていることが分かる。

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1|同じ木の実にも、違う時間がある

収穫期の朝、山西さんは畑で梅の実の状態を確かめる。南高梅の実がまだ青く硬ければ、もう少し待つ。黄色みや艶が出てきた実を見て、今日採ったほうがよいと判断することもある。

「今日はこの木を採ろう」「この木はもう少し置いておこう」。そうした判断には、長く梅を見てきた経験が関わっている。今の状態だけでなく、この後どう熟していくかまで考える必要があるからだ。

うめよしでは、100年以上前に祖先の良吉が始めた梅栽培を、梅干しの加工、そして梅酒づくりへと広げてきた。土をつくり、剪定をし、草を刈る。一年かけて育てた梅も、収穫の日を決めたところで仕事が終わるわけではない。

梅の木の下で、青いネットを留める作業。
梅の木の下で、青いネットを留める作業。写真提供:紀州本庄うめよし

採った後も実の状態は変わる。山西さんは、収穫した梅をできるだけ早く仕込む一方、露茜(つゆあかね)という品種については、収穫後にさらに熟させる「追熟」の加減も見極めると説明する。品種が違えば、仕込みまでの判断も変わる。

梅を育てる仕事と梅酒を造る仕事は、この「今、どう扱うか」という判断でつながっている。

青いネットの上で梅を集める作業。
青いネットの上で梅を集める作業。写真提供:紀州本庄うめよし

2|家庭で漬けていた梅酒を、造る仕事へ

梅酒づくりの始まりは、山西さんの母が趣味で長年漬けていた自家製梅酒だった。当初、家族はそれを事業にするつもりではなかったという。

きっかけは2005年のテレビ取材だった。父は自分たちの梅で造った梅酒を事業にできないかと考え、翌日には必要な手続きを調べ始めた。

ただ、梅干しを造ってきた経験があっても、すぐに酒類の製造を始められるわけではない。免許の取得が必要だった。まず他社の梅酒を扱いながら学び、自分たちで造る機会を待った。

やがて、地域の梅を使った梅酒づくりを後押しする、みなべ町の梅酒特区ができた。説明会に参加し、申請の準備を進め、うめよしは2009年4月にリキュールの製造免許を取得した。山西さんによれば、その年の6月に梅酒の仕込みを始めた。

畑の梅を加工してきた家族が、新しく酒を造る仕事を始める。原料への経験はそのまま生かせても、制度や手続きは一つずつ学ばなければならなかった。

3|手作業を残すのは、昔からの習慣だからではない

梅酒を造れるようになった後も、山西さんは仕事の進め方を選んできた。例えば、仕込んだ梅酒をこして整える、ろ過の工程だ。

ろ過を助ける加工助剤を使えば、もっと短時間で処理できる。しかし、うめよしではそれを使わず、時間をかけて手作業で少しずつろ過していると山西さんは話す。

正直、手間もかかりますし、効率はよくありません。

残したいと考えているのは、梅の味や香りだ。透明に整えることだけを目標にせず、育ててきた梅をどう仕上げるかを重視している。

収穫の時期には、畑の仕事と選別、仕込みが重なる。まとめて処理すれば仕事を進めやすくなる。それでも山西さんは、自分たちがよいと判断した梅の状態を、作業の都合だけで変えたくないという。

でも、私は「たくさん作ること」よりも、「自分たちが納得できるものを作ること」を選びました。

手をかける分、同じ時間に造れる量には限りがある。山西さんは、それを悪いことだとは考えていないという。

昔からの方法を残すこと自体が目的なのではない。梅の状態を見て、自分たちが納得できる方法を選んだ結果、人の手を残している工程がある。畑での判断は、ここでも続いている。

4|京都の酒蔵との出会いから、「縁」が生まれた

日本酒をベースにした梅酒を造ろうと考えたとき、山西さんは、どこの酒を使うかを決めきれずにいた。そこで出会ったのが、京都の日本酒蔵、佐々木酒造の社長だった。

山西さんによれば、佐々木社長との話の中で出たのは、仕入れる梅の状態が毎回異なる中で、梅酒の仕上がりをそろえる難しさだった。

山西さんはそこで、うめよしで梅酒を造らせてほしいと申し出た。どんな実を育て、いつ採り、どの状態で仕込むか。梅農家であり、梅干しの加工もしてきたうめよしなら、その判断まで担えると考えた。

佐々木酒造の日本酒と、うめよしの南高梅を使って試作を進めた。日本酒を造る側と、梅を育てて加工する側。それぞれの仕事を合わせたことが、縁 梅酒(ENISHI Umeshu)の始まりになった。

「縁」という名前は、この出会いに由来する。日本酒を使った梅酒を造りたいと考えていた時期に、人と出会い、一緒に商品をつくることになった。その経緯を、山西さんは名前に込めた。

梅を自分で育てることの意味が、ここではもう少し具体的になる。原料を用意するだけでなく、その実をいつ採り、どの状態で仕込むかまで引き受けられる。それが、別の造り手と仕事をする際にも生きている。

5|梅干しから続いていた、海の向こうとの付き合い

人とのつながりは、海外での仕事にも関わっている。うめよしは、梅酒を造る前から梅干しをアメリカに輸出していた。ハワイには、長く付き合いのある取引先があった。

梅酒の事業を始めたとき、山西さんはその取引先に相談した。応援するという言葉をもらい、輸入業者も紹介してもらったという。

製品を造っただけでは、海外との仕事は始まらない。輸出の手続きを進め、現地で扱う人とつながる必要がある。梅干しの仕事で築いてきた付き合いが、梅酒を海外へ届ける際にも助けになった。

長くお付き合いしてきた方との信頼が、次の挑戦を支えてくれた。

梅酒の海外展開は、梅干しの取引で続いてきた付き合いから始まった。以前からの仕事を通じて相談できる相手がいたことが、次の挑戦につながった。

6|会長から受け継いだ言葉を、自分の仕事で確かめる

うめよしの会長からは、細かく指図されるより、自分で考えてやりたいことをするようにと言われてきた。一方で、繰り返し伝えられた言葉がある。

人を裏切らないようにしなさい。人には助けてもらったら、自分も人を助けなさい。そして、義理を大切にしなさい

海外での仕事を振り返ると、山西さんはその言葉を実感する。困ったときに相談でき、次の人を紹介してもらえる関係は、一度の商談だけでできるものではない。

今は、「自分はいつまで海外営業をできるんだろう」と考えることもあるという。移動にも、現地での仕事にも、体力と時間が要る。それでも、これまでの付き合いを大切にしながら、自分で足を運んで伝えたいと話す。

梅の木の下に敷かれた青いネットと梅の実。
梅の木の下に敷かれた青いネットと梅の実。写真提供:紀州本庄うめよし

畑では、今日採るか、もう一日待つかを決める。ろ過では、人の手を残すことを選ぶ。遠くの取引先には、自分で会いに行って伝えようとする。

うめよしの梅酒づくりをたどると、完成した製品の前に、こうした仕事があることに気づく。山西さんが受け継いでいるのは、梅を育てる技術だけではない。自分で判断することと、その判断を支えてくれる人との付き合いでもある。

書面取材:紀州本庄うめよし・山西善信さん。写真提供:紀州本庄うめよし。

ヒーローは紀州本庄うめよしの提供写真をもとにしたBGオリジナルイラストです。実際の畑や作業を記録した写真ではありません。

本記事は、梅栽培、梅酒づくりの工程、造り手の仕事と歴史を紹介するためのものです。酒類の広告や、飲酒・購入の促進を目的とするものではありません。20歳以上の方を対象としています。飲酒運転はおやめください。

This article presents information about ume cultivation, umeshu production, and the working practices and history of 紀州本庄うめよし. It is not intended to advertise alcoholic beverages or encourage their purchase or consumption. For readers aged 20 and above. Never drink and drive.

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