芋焼酎なのに、グラスからライチが香る──「だいやめ」を支える香熟芋と、採用する造り手が全体の1%未満という蒸留法

芋焼酎なのに、グラスからライチが香る──「だいやめ」を支える香熟芋と、採用する造り手が全体の1%未満という蒸留法

芋焼酎と聞いて思い浮かべる香りは、ふつう土っぽく、どっしりと力強いものだろう。ところが、グラスに鼻を近づけた人の多くが思わず「ライチ」と口にする芋焼酎がある。濵田酒造(鹿児島県いちき串木野市)の「だいやめ 25度」である。さつまいもから、なぜライチの香りが立ちのぼるのか。その答えは、原料と蒸留という二つの選択に隠れている。

全体の1%未満という選択

鍵のひとつは、芋焼酎の造り手のなかでもごく一部しか採用していない蒸留方式にある。

だいやめは低温の減圧蒸留で仕上げられている。米国の酒類専門小売業者の見解によれば、この低温減圧蒸留を用いる芋焼酎メーカーは全体の1%に満たないという。芋焼酎の多くは常圧蒸留で造られ、力強くふくよかな芋の風味が引き出される。これに対し減圧蒸留は、低圧下で低温蒸留することで、加熱で壊れやすい繊細な香りの成分を保ったまま酒へ移すことができる。だいやめに広がる、ライチやマスカットを思わせるみずみずしい香りは、この少数派の選択の上に成り立っている。

「香熟芋」という発明

蒸留方式と並ぶもうひとつの柱が、原料のさつまいもそのものにある。

だいやめには「香熟芋(こうじゅくいも)」と名づけられた、濵田酒造が独自に熟成させたさつまいもが使われている。蔵の説明によれば、この熟成の工程を経ることで、ライチやマスカット、エルダーフラワーを思わせる香りのもとになるモノテルペンアルコール類(MTA)という香気成分が増していくという。蔵元はこの香りを「アルザスワインを思わせるライチ」と表現している。欧州白ワインの語彙で語れる芋焼酎は、それまで多くはなかった。

この香熟芋を支えているのは、実は機械ではなく人の手である。芋の仕込みが続く時期、蔵には毎日大量のさつまいもが届く。その熟成の進み具合を、職人が自分の鼻で確かめながら見極めていく。嗅覚が香りに慣れて鈍らないよう、合間に「香りのリセット」をはさみながら判定を続けるという。だいやめのあの香りは、こうした地道な手仕事の積み重ねの先にある。

焼酎部門の頂点という評価

この香りの設計は、海外の審査の場でも確かに受け止められている。だいやめ 25度は2019年、International Wine & Spirit Competition(IWSC)の焼酎部門で、部門の最高賞にあたるトロフィーを獲得した。金賞のさらに上、その年の焼酎部門の頂点にひとつだけ与えられる賞である。翌2020年には、International Spirits Challenge(ISC)の焼酎部門で最高金賞のダブルゴールドを受賞している。ジンやウイスキーといった世界中の蒸留酒と同じ評価軸で審査されるこれらの品評会で、本格芋焼酎が最高位に並んだことになる。

「だれやめ」という鹿児島の言葉

「だいやめ」という名前は、鹿児島の言葉に由来する。一日の労をねぎらい、また明日へと気持ちを切り替える。鹿児島で「だれやめ」と呼ばれてきた、暮らしのなかに根づく習慣を表す言葉である。世代も性別も国籍も超えて、この生活文化を世界へ伝えたい。そんな蔵の思いが、ひとつの方言に込められている。

だいやめが世に出たのは2018年9月、濵田酒造の創業150周年の節目だった。1868年(明治元年)に創業したこの蔵は、「伝統・革新・継承」をそれぞれ担う三つの蔵を持つ。だいやめを醸すのは、このうち「革新」を受け持つ傳藏院蔵である。傳藏院蔵は、鹿児島の焼酎蔵として初めて食品安全管理の国際規格FSSC 22000の認証を取得した蔵でもある。蒸留したあとに残る粕からバイオガスを取り出して使い、蒸しの工程ではエネルギー消費を抑え、照明のLED化などにも取り組んでいる。150年の歴史を背負いながら、造りの現場は驚くほど現代的である。

バンコクの食卓へ

全体の1%に満たない蒸留方式、香熟芋という原料の発明、そして焼酎部門の頂点に立った評価。だいやめ 25度という一本は、これらが交わる地点に立っている。

ライチの香りは、東南アジアの人々にとってなじみ深いものでもある。バンコクのガストロノミーシーンでも、こうした香りの設計を持つ酒を受け止める土壌が育ちはじめている。さつまいもからライチが香る。その問いの答えは、香熟芋という発想と、全体の1%に満たない蒸留法にあった。常識を一つずつ問い直してきた濵田酒造の手つきは、グラスに鼻を近づけた瞬間の小さな驚きとなって、150年の時をへて、いまバンコクの食卓にも伝わりはじめている。


This article is intended solely to explore the distillation techniques and cultural heritage of Hamada Shuzo and the DAIYAME brand, as reflected in the IWSC and ISC award records, and is not intended to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับเทคนิคการกลั่นและมรดกทางวัฒนธรรมของ Hamada Shuzo และแบรนด์ DAIYAME ที่สะท้อนในผลรางวัล IWSC และ ISC เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ


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