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黒麹・白麹・黄麹
焼酎の中にまったく異なる風景を描く三つの麹菌

ワインがピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨンといったブドウ品種で語られるように、焼酎に向き合うときにまず押さえたい名前が三つある。黒麹、白麹、黄麹である。学術的には、それぞれ Aspergillus luchuensis、Aspergillus luchuensis mut. kawachii、Aspergillus oryzae にあたる。これら三つの異なる微生物が、「焼酎」という一つのカテゴリーの中に、まったく異なる表現を生み出している。
焼酎に麹が必要な理由
ブドウは、皮に酵母がついてさえいれば、糖を直接アルコールに変えられる。しかし米、芋、麦は糖ではなく、デンプンが詰まっている。酵母だけでは、そのままの形のデンプンを扱えない。
そこで登場するのが麹菌である。麹菌が穀物の上で繁殖すると、アミラーゼと呼ばれる酵素をつくり、デンプンを糖に分解する。糖になって初めて、酵母がそれをアルコールに変えられる。日本酒も焼酎も、この二段階の工程の上に成り立っている。Jeremy Umansky らが『Koji Alchemy』で説明するように、麹は甘味、うま味、香りを担う酵素を同時につくり出す微生物である。どの麹を使うかは、細かな技術上の選択ではなく、蒸留酒の骨格そのものを決める根本的な設計判断である。
黒麹:南国の力強い守り手
黒麹は、もともと琉球諸島の泡盛づくりの中で育まれた。高温多湿の亜熱帯の気候のなかで、大量のクエン酸をつくり、もろみを酸性に保って腐敗しにくくする。泡盛が沖縄で500年以上つくられてきた一因は、この麹菌の守りの強さにもある。
20世紀初頭、鹿児島の研究者である河内源一郎が、黒麹を本土の焼酎づくりに導入した。それまで南九州の蔵は、日本酒づくりで使われる黄麹に頼り、夏場の腐敗に苦しんでいた。黒麹の採用は焼酎の技術史における転機となり、産業全体を安定させた。
現代の例として、濵田酒造の DAIYAME 40 がある。丁寧に熟成させた「香熟芋」と減圧蒸留を組み合わせ、ライチやマスカットを思わせる華やかな果実の香りを生み出している。この表現は、黒麹が明るく香り高い味わいも生み出しうることを示している。
白麹:黒麹から生まれた穏やかな突然変異
白麹は、黒麹の自然突然変異として現れた。1924年、河内の麹室で、黒い胞子のなかに白い胞子が混じっているのが見つかった。同じ種の変異株でありながら、色だけでなく、蒸留酒に与える性格も異なっていた。戦後から現在まで、白麹は南九州の本格焼酎づくりで主流の菌株となっている。
中村酒造場の「Nakamura」は、日本酒づくりを思わせるスタイルで白麹の可能性を示している。九州に数少なく残る石造りの麹室を使い、一枚一枚の木の蓋で麹を育てる手間のかかる蓋麹を、今も続けている。白麹の中でも表現は異なる。森伊蔵酒造の「Gokujo Moriizo」は長い時間をかけて熟成され、なめらかで丸みのある口当たりに至っている。これは、白麹の穏やかな性質が時間という次元と出会うとどうなるか、その一つの答えである。
黄麹:日本酒から越境してきた優雅さ
黄麹は日本で最も広く使われている麹菌で、日本酒、味噌、醤油を支えている。クエン酸を大量にはつくらないため温度管理がより難しく、戦後、南九州の焼酎づくりからほぼ姿を消した。
しかし近年、あえてこれを復活させる蔵が出てきた。代表例が、八海醸造の米焼酎「Yoroshiku Senman Arubeshi」である。日本酒の造り手にとってなじみ深い黄麹と清酒酵母を用い、三段仕込み、減圧蒸留、2年以上の熟成を重ねることで、日本酒づくりの文法を、実質的に米焼酎へ移し替えている。その結果、吟醸香のような華やかな香りを備えた蒸留酒となる。焼酎づくりの伝統的な制約を捉え直す、優雅な越境の試みである。
バンコクの食卓で三つの扉を開く
バンコクでは、日本料理店やファインダイニングで、焼酎の存在感が静かに高まっている。ラベルの後に「黒麹」「白麹」「黄麹」と添えるだけで、その酒に新たな奥行きが生まれる。芋の品種、米の品種、蒸留方法、熟成といった変数が、最初の麹の選択によって穏やかにまとめられる。
焼酎の言葉を語ることは、500年にわたって織られてきた日本の発酵文化の知恵と、食卓で結び直すことである。この三種の麹は、その入口に置かれた、三色の小さな扉である。(Mr.Bacchus)
This article is intended solely to explore the distillation techniques and cultural heritage of Hamada Shuzo (DAIYAME), Nakamura Shuzojo (Nakamura), Mori-Izo Shuzo (Mori-Izo) and Hakkaisan Brewery (Yoroshiku Senman Arubeshi), and the role of the three koji molds in shochu craftsmanship, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับเทคนิคการกลั่นและมรดกทางวัฒนธรรมของผู้ผลิตโชจูในญี่ปุ่น ได้แก่ Hamada Shuzo (DAIYAME), Nakamura Shuzojo (Nakamura), Mori-Izo Shuzo (Mori-Izo) และ Hakkaisan Brewery (Yoroshiku Senman Arubeshi) รวมถึงบทบาทของเชื้อราโคจิทั้งสามชนิดในงานฝีมือการผลิตโชจู เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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