
日本酒は「誰が造ったか」で選ばれる——「若手の夜明け」と、個の時代のはじまり
これまで、日本酒は「ブランド名」で選ばれてきた。認知度の高い大手銘柄や、受賞を重ねた老舗蔵が中心だった。規模と信頼が、選ばれる理由の軸にあった。だが今、それとは別の選び方が、輸入業者やレストランの間で広がりつつある。「誰が造ったか」で選ぶ、という視点だ。
背景にある、静かな世代交代
この変化の背景には、酒蔵の世代交代がある。醸造の最高責任者である杜氏(とじ)の高齢化が進み、後継者が見つからないまま先行きを案じる蔵も少なくない。日本酒造杜氏組合連合会に所属する杜氏は、1965年(昭和40年)の約3,700人から、近年は700人台まで減ったとされる。
その一方で、30代から40代前半の、次世代を担う造り手が、各地で立ち上がっている。大学で醸造を学んで家業に戻った者もいれば、IT企業や飲食業から、縁もゆかりもない地方の蔵へ飛び込んだ者もいる。全国の若い造り手が東京に集う「若手の夜明け」は、その動きを可視化する場になっている。
彼らに共通するのは、「酒を造ることだけが目的ではない」という感覚だ。彼らは、原料米の選択、仕込み水の解釈、発酵管理の考え方まで、自分の言葉で語れる造り手でありたいと考えている。その思いが、この世代を押し上げている。
ワインの「ヴィニュロン」という補助線
ワインの世界に、ヴィニュロン(vigneron)という言葉がある。畑を耕し、醸造にも携わり、土地の個性を解釈して自らの考えを酒に反映させる造り手のことだ。
次世代の蔵人たちは、これに近い発想を持ちはじめている。米を選ぶところから、麹を管理し、発酵を読み、仕上げに至るまで、造り手の判断が各工程に反映される酒。近年は、米をあえて磨きすぎず、個性を残す造りや、生酛(きもと)・山廃(やまはい)といった伝統技法の現代的な再解釈も語られる。これも、造り手個人の思想の表れの一つだろう。何を残し、何を手放すか。その選択そのものを、次世代は語りはじめている。
バンコクの輸入リストに届くまで
この変化は、バンコクにも無縁ではない。
ワインの世界で、ナチュラルワインの小規模生産者が「個性」で評価されるようになったのと同じ流れが、日本酒にも及びはじめている。欧州のレストランや北米のクラフト系酒販店が、売れ筋の大手銘柄よりも「造り手の物語を語れる酒」に注目するようになった、という声も増えている。
バンコクでも、ファインダイニングやクラフト系のバーを中心に、ドリンクリストに「物語と個性」を求める傾向が強まっている。オーストラリアや南アフリカの小規模ワイナリーのワインが自然にリストへ加わるのと同じ感覚で、次世代の個性派造り手が醸す日本酒がそこに加わる動きも、少しずつ見えはじめている。
問われるのは、造り手の思想
「この酒は、誰が、なぜ、どのように造ったのか」。飲食店や輸入業者がそう問いはじめたとき、その問いに答えられる造り手が評価の対象になっていく。
「若手の夜明け」に映し出されているのは、単なる後継者問題の解決策ではなく、日本酒が選ばれる理由そのものが次世代によって組み替えられつつあるという事実だ。どのような造り手が、どのような土地で、どのような考えで酒を醸すのか。その問いが、バンコクの輸入リストの選定基準にも、静かに及びはじめている。
This article is intended solely to explore the wine culture and viticulture heritage of Thailand, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับวัฒนธรรมไวน์และอุตสาหกรรมองุ่นของประเทศไทยเท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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