
「疲れを癒す」という名の酒――鹿児島「だいやめ」、蒸留という段を上る
連載「和酒の階段(The Sake Staircase)」第3話|第2段:焼酎①
この連載では、最初の一段を日本酒に置いた。第1話では小鼓、第2話では梵を通じて、米を磨いて醸す世界を二度にわたってたどってきた。第3話では、歩みはひとつ上の段に移る。醸造酒から蒸留酒へ。日本酒から焼酎へと進む、第2段の入口である。
段が変わると、酒の造り方も変わる。日本酒は、米・米麹・水を原料に、発酵させたもろみを搾ってつくる醸造酒である。焼酎は、麹を使って発酵させたもろみを、さらに蒸留してつくる蒸留酒だ。発酵で生まれた香気成分を、蒸留という工程で抜き出し、香りを凝縮させ、アルコール度数を高める。ひとつだけ、両方の段を貫くものがある。麹である。米や芋のでんぷんを糖に変える糖化は、日本酒造りでも焼酎造りでも麹が起点になる。
この第2段の入口を案内するのは、鹿児島県いちき串木野市の濵田酒造である。創業は1868年(明治元年)。創業から150年を超える蔵は、役割の異なる三つの蔵を持つ。伝統を受け継ぐ伝兵衛蔵、革新を担う傳藏院蔵、継承を託された金山蔵。守ること、変えること、受け継ぐことを、蔵ごとに分けて同時に進める構えである。
焼酎という言葉に、安い酒、年配の男性の晩酌、というイメージを重ねる人は少なくない。そのイメージを、濵田酒造はある一本で静かに問い直してきた。銘柄の名は「だいやめ」。革新を担う傳藏院蔵で、2018年、創業150周年を記念して生まれた。
「だいやめ」とは、鹿児島の言葉で、晩酌をして一日の疲れを癒すことをいう。「だれやめ」と呼ばれてきた土地の習慣である。蔵は、この飾りのない日常語を、世界へ問う銘柄の名に選んだ。世代も性別も国境も超えて伝わる生活の文化がここにある、という賭けだった。掲げたコンセプトは「未踏の香り」である。
その香りは、これまでの焼酎のイメージからは遠い。蔵が独自に熟成させた「香熟芋(こうじゅくいも)」というさつまいもを使い、黒麹で仕込んだもろみを、香りを損なわないよう減圧蒸留にかける。立ちのぼるのは、ライチや白い花を思わせる瑞々しい香りだ。海外の専門媒体によれば、芋焼酎に減圧蒸留を用いる蔵は、全体のごくわずかにとどまるという。
その香りは、焼酎という枠の外でも評価された。「だいやめ」は、ジンやウォッカと同じ土俵で審査される世界の酒類コンペティションで、高い評価を重ねてきた。ロンドンのIWSCで2019年に焼酎部門のトロフィーを得たのをはじめ、ISCでは2020年に、サンフランシスコのSFWSCでは2023年に、それぞれダブルゴールドに選ばれている。さらに、パリで開かれた本格焼酎・泡盛コンクールのKura Master 2024では、芋部門のプラチナ賞を得た。焼酎という区分を超えて、世界のスピリッツとして通用することを、客観的な評価が裏づけている。
海外では、アルコール度数を40度に設計した「DAIYAME 40」も、バーテンダーを中心とするカクテルシーンに向けた別の一本として展開されている。バンコクでも取り扱いがある。
「だいやめ」を生む傳藏院蔵は、鹿児島の焼酎蔵として初めてFSSC 22000という食品安全の国際規格の認証を取得した蔵でもある。蒸留粕をバイオガスとして活用し、蒸し工程でのエネルギー消費を抑える取り組みも進めている。守るだけでなく、変えるという傳藏院蔵の姿勢は、酒質だけでなく、蔵の営みそのものにも及んでいる。
第1段の日本酒も、この第2段の焼酎も、出発点にあるのは、麹による糖化と、その後の発酵である。日本酒は発酵後に搾り、焼酎はそこからさらに、蒸留へと進む。「だいやめ」の物語は、三つの場所につながっている。蔵元の物語をゆっくり辿る場として、テイスティングバーの Salon du Japonisant がある。プロが選んだ品揃えと、その知識に触れられる場として、伝統的な酒販店の Nadaya Saketen がある。そして、麹による糖化から発酵、蒸留へと至る焼酎の成り立ちを、麹という視点から捉え直す場として、KOUJI ALCHEMIST by salon du japonisant がある。同じ一本を、三つの異なる角度から知ることができる。
乾杯タイランド2026の会場で「だいやめ」に出会ったとき、思い出してほしいのは、この一本が示している段の高さである。焼酎は、日本酒とは別の造りを持つ、もうひとつの和酒の段だ。第1段で米を磨く世界を知った私たちは、いま蒸留という段に立っている。
Koji’s Note
私が「だいやめ」にいちばん惹かれているのは、麹という同じ起点から、日本酒は醸造へ、焼酎は蒸留へと、まったく違う段へ進んでいくところだ。もうひとつ惹かれているのは、この蔵が世界を見据えて、海外の人にも受け入れられる酒質を研究し続けている姿勢である。ライチはタイでも身近な果実だ。蔵が磨いたその香りは、バンコクでもまっすぐ伝わる。
開幕まで、あと51日。次回も第2段。焼酎の階段を、もう一段上る。
This article is intended solely to explore the distillation techniques and cultural heritage of Hamada Syuzou and the Daiyame brand, and does not aim to promote or encourage the consumption or purchase of alcohol. Participating producers and products at KANPAI Thailand 2026 may change before the event. For those aged 20 and over; please drink responsibly.
บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับเทคนิคการกลั่นและมรดกทางวัฒนธรรมของ Hamada Syuzou และแบรนด์ Daiyame เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาการบริโภคหรือการซื้อเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ รายชื่อผู้ผลิตและผลิตภัณฑ์ที่ร่วมงาน KANPAI Thailand 2026 อาจมีการเปลี่ยนแปลงก่อนวันงาน สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างมีความรับผิดชอบ
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