Bacchus
LINE

Blog

みりんから生まれたベルモット──米・麹・薬草がつなぐ日本のアペリティフ

みりんから生まれたベルモット──米・麹・薬草がつなぐ日本のアペリティフ

甑を持たない蒸留所から生まれたベルモット

ベルモットとは何か。その核心は、ハーブとスパイスを浸したフォーティファイドワインである。18世紀のトリノで型が定まり、ネグローニやマンハッタンといった定番カクテルの土台として長く使われてきた。ベースは常にワイン――この前提は200年以上、世界的にほとんど疑われてこなかった。岩手県金ケ崎町の小さな蒸留所が、その前提に静かに向き合っている。

バーテンダーが出会った一本のベルモット

及川和真は1993年、岩手県金ケ崎町の農家に生まれた。東京でバーテンダーとしてのキャリアを始め、ある一本のカクテルに出会う。1786年に生まれたイタリアの伝説的な甘口ベルモット、カルパノ・アンティカ・フォーミュラを使ったものだった。バニラとサフランの深い香り、幾重にも重なるハーブの苦味――この一本が、及川のその後を方向づけた。2015年にはカナダへ渡り、天然素材を用いたカクテル開発に取り組む。帰国後は東京・目黒にボタニカルを軸にしたバーを開き、DIAGEO WORLD CLASS 2019 日本大会のファイナリストにも選ばれた。バーカウンターで技を磨きながら、及川の中である問いが育っていった――自分の思い描くベルモットを、自らの手でつくれないか。新型コロナウイルスの世界的な停滞期、及川は故郷・岩手へ戻る。2021年、祖父が営んでいた精米所の跡地に、金ケ崎ボタニカル蒸留所を設立した。

制約を技法に変える

蒸留所を立ち上げるにあたり、大きな構造的制約に直面した。受け継いだ木造の建物は、消防法の規定により従来型の蒸留器を設置できなかった。ハーブリキュールづくりにおいて蒸留は通常欠かせない工程であるため、これは致命的な制約にもなりかねなかった。しかし及川は、この制約を自らの技法へと転じた。蒸留に頼らず、浸漬(マセレーション)の技術に全面的に取り組んだのである。ボタニカルは3〜4段階に分けて個別に浸漬され、香りの複層性を組み立てるように丁寧に重ねられる。この工程は、バーテンダーが複数のスピリッツを重ねて一杯のカクテルの均衡を組み立てる発想と重なる。バーカウンターで培った感覚が、そのまま製造の現場に生かされている。

ベースをワインからみりんへ

及川はもう一つの前提を、静かに書き換えた。ベースにワインではなく、みりんを選んだのである。みりんは、もち米・米麹・焼酎を糖化・熟成させてつくる日本の伝統的な調味料だ。麹が生み出すうま味豊かなアミノ酸と、ブドウ糖やオリゴ糖が組み合わさることで、ワインの単純な糖分とはまったく異なる複雑な甘みが生まれる。このみりんの開発には約2年を要した。岩手県産の高級米「金色の風」を原料とし、愛知県の老舗みりんメーカー・九重味淋の特許技術を用いて醸造されている。度数を補うためには、酒粕を原料とする粕取り焼酎を選んだ。上品な吟醸香と深いうま味をもたらす選択である。ワインベースのベルモットがブドウ由来の酸とタンニンで骨格を築くのに対し、AKA-ONI ROSSOは米麹のうま味と、幾重にも重なる自然な甘みの複雑さの上に成り立っている。この土台に、東北の山で採れるクロモジとタムシバ、日本の伝統的なボタニカルであるキハダ(オウバク)、そしてベルモットの核となるニガヨモギが丁寧に織り込まれる。この一本の中で、西洋のハーブリキュールの伝統と、日本の「お屠蘇」文化が静かに交わっている。

ボタニカルの一本が開く新しい章

AKA-ONI ROSSOは2024年後半に発表された、ボタニカルスピリッツの世界における新しい存在である。100年続くブランドが持つような歴史はまだない。しかしその成り立ちは、静かな技術革新を体現している。世界のベルモットの中を見渡しても、これと同じものはほかにない。日本酒をベースにした日本式ベルモットはいくつか存在するが、みりんという複雑な世界に踏み込んだのはこれが唯一である。蒸留器を置けなかった木造の精米所から、200年続いた前提に挑む一本が生まれた。伝統を再構築しようとするその姿勢こそが、このベルモットの物語の核心にある。

This article is intended solely to explore the blending craftsmanship and cultural heritage of Kanegasaki Yakusou Shuzo (K.S.P Co., Ltd.) and the AKA-ONI ROSSO brand, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับศิลปะการผสมผสานและมรดกทางวัฒนธรรมของ Kanegasaki Yakusou Shuzo (K.S.P Co., Ltd.) และแบรนด์ AKA-ONI ROSSO เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ

Discover the culture behind every bottle

We share brewery stories, tasting notes and the craft of koji & fermentation — for educational and cultural purposes only.

เราถ่ายทอดเรื่องราวจากผู้ผลิต บันทึกรสชาติ และศาสตร์แห่งโคจิและการหมัก — เพื่อการศึกษาและวัฒนธรรมเท่านั้น

Follow on Instagram
Facebook


KANEGASAKI Creme de Framboise / KANEGASAKI Creme de Cassis Kubo / WAKA SHIORI Japanese Aperitif / WAKA MINORI Japanese Aperitif / WAKA ITSUKI Japanese Aperitif / WAKA HAJIME Japanese Aperitif / AO-ONI DRY Japanese Dry Vermouth / AKA-ONI ROSSO Japanese Sweet Vermouth / JAPANESE SAKE VERMOUTH