Bacchus
LINE

Perspectives

数年先を決める人と、今夜を決める人――ジムビームの蒸溜停止が映すもの

2026年の1年間、ジムビームのケンタッキー州クレアモントにある主要蒸溜所が、新たな原酒の蒸溜を止めている。2025年12月に発表された措置である。設備の不調でも経営の行き詰まりでもない。瓶詰めも熟成も、見学施設の営業も続いている。別の敷地にあるもう一つの蒸溜所は稼働したままで、人員整理も行われていない。

止めた理由は、足りないからではなかった。

つくる速さが、売れる速さを追い越した

ケンタッキー州の蒸溜業界団体が2026年2月に公表した調査によれば、州内の貯蔵庫では約1,610万樽のバーボンが熟成の途中にある。過去最高の水準で、10年前と比べると2.75倍に増えた計算になる。

背景には、ウイスキーという酒がもつ構造がある。バーボンは樽の中で数年を過ごしてから瓶に詰められる。つまり蒸溜所は、数年後に人がどれくらい飲むかを見込んで、今日の生産量を決めなければならない。長い熟成を要する酒では、仕込んだ時点の見込みと、出荷できる状態になった時点の実需が食い違う。今回の判断は、その難しさが表に出た例である。

見込みが甘かったというより、決めてから答え合わせまでの時間が長すぎるのである。

終わりの時刻を、誰が決めるか

では、2025年から2026年にかけて、需要側で何が動いたのか。ビールの側にも同じ時期に動きがあり、そちらのほうが変化の中身を映している。世界第二位の規模をもつハイネケンは2026年2月、今後二年で最大6,000人分の職を削減すると発表した。2025年のビール販売量は前年を1.2%下回っている。

原因を「健康志向が高まって人が酒を飲まなくなった」で片づけたくなる。それも事実の一部ではある。ただし目を引くのは、ハイネケンが数年前から広告で何を対照に置いてきたかである。同社は世界の成人一万七千人を対象にした調査をもとに、一日の平均的なスマートフォン利用時間が五時間四十八分にのぼることを示し、あえて機能を絞った携帯電話を開発するなどして、画面を離れて過ごすことを主題にした発信を続けてきた。ビール会社が競争相手として描いたのは、別のビールではなかった。

仕事を終えて帰宅し、食事と入浴を済ませたあと、自由に使える余暇はせいぜい二時間か三時間である。もっとも、酒と画面は排他的ではない。家で飲みながら動画を見る人はいくらでもいる。それでも、外での長い酒席と画面越しの娯楽のあいだには、はっきりした違いが一つある。

終わりの時刻を自分で決められるかどうかである。

酒席は、何時に切り上がるか正確には読めない。一軒で終えるつもりが次の店に移ることもある。帰宅の時刻も、翌日の体調も、始める時点では確定していない。画面のほうは、動画一本で切り上げることも、一試合だけ見て寝ることもできる。実際には夜更かしすることも多いのだから、これは感覚の問題にすぎない。だが、始める合図と終える合図が自分の手の中にあるという感覚は、決定的である。

人が選び分けているのは、飲むか飲まないかではないのかもしれない。先行きの読めない過ごし方と、自分で切り上げられる過ごし方のどちらを取るかである。

日本のウイスキーは、同じずれを先に通り抜けた

この構図に、日本の酒類業界はすでに一度直面している。

日本のウイスキーの国内出荷量は1980年代前半にピークを迎え、そこから二十五年ほど縮小が続いた。底に達した時期には、ピーク時の数分の一の水準まで落ちた。当時のウイスキーは、仕事で成果を上げた男性が静かに向き合う酒であり、接待の席に置かれる酒でもあった。大人であることや社会的な立場を示す記号だったのである。時代が動くと、その記号が重荷になった。大ぶりのグラスを前にした中高年男性という像は、洗練の象徴ではなく、過ぎた時代の風景に見えるようになった。

2008年、サントリーはハイボールを軸にした立て直しに着手する。やったことは、ウイスキーそのものを作り替えることではなかった。炭酸で割ることで、アルコール度数は下がる。食事と並ぶ卓上の飲みものへと位置づけを変え、それまでとは別の場面に置き直したのである。

そして何より、「中高年男性の酒」という記号を切り離した。グラスが変わり、置かれる場所が変わり、広告に登場する人が変わった。同じウイスキーが、バーの奥まった席から、明るい食堂の卓上へ移った。

取り組みが始まった翌年から、出荷量は二年続けて前年を上回った。二十七年ぶりの反転だった。人が急に強い酒を好きになったわけではない。酒の側が、人の暮らしの形に合わせて自分の置かれ方を変えたのである。

戻せない判断と、毎晩の観察

ここに、蒸溜所と飲食店の非対称がある。

蒸溜所は数年先を見込んで原酒を抱える。仕込みの判断は、間違っていたと分かる頃には取り返しがつかない。対して飲食の現場は、客がどの場面で何を選んだかを毎晩観察できる。飲食の現場における判断の周期は、作り手のそれより桁違いに短い。

とすれば、現場にしかできない仕事がある。一晩ごとの短い観察を、取り消しにくい仕入れの判断へどう橋渡しするかである。何が売れたかだけではない。どの時間帯に、どんな料理と並んで、どういう切り上げ方をする客が選んだのか。ハイボールの事例が示したのは、中身を変えなくても、置かれる場面を変えれば需要の形が変わるという事実だった。その場面を最初に見つけられる位置にいるのは、蔵でも蒸溜所でもなく、客の卓を見ている側である。

KOUJI ALCHEMIST by salon du japonisantが麹と発酵を軸に試しているのは、素材そのものよりも、その差し出し方である。バンコクでそうした観察を重ねてきた店の知見が、いずれ数年先の仕込みの判断を動かすこともありうる。


This article is intended solely to explore structural changes in the global alcoholic beverage industry and the way drinking occasions are being redefined, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับการเปลี่ยนแปลงเชิงโครงสร้างของอุตสาหกรรมเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ทั่วโลก และการนิยามโอกาสในการดื่มขึ้นใหม่ เพื่อเป็นข้อมูลความรู้เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ


“27から140超へ──ジャパニーズウイスキーの「第二世代」が、日本各地で静かに樽を満たし始めている” / “「ウイスキーの次」を探しているバンコクのバーへ──ジャパニーズクラフトジンという選択肢の実務ガイド” / “年数が書かれていないウイスキーを、どう説明するか——NASについて確かめたい四つのこと”


三郎丸蒸留所のスモーキーウイスキー / 戸河内ウイスキー / 桜尾シングルモルトウイスキー

Discover the culture behind every bottle

We share brewery stories, tasting notes and the craft of koji & fermentation — for educational and cultural purposes only.

เราถ่ายทอดเรื่องราวจากผู้ผลิต บันทึกรสชาติ และศาสตร์แห่งโคจิและการหมัก — เพื่อการศึกษาและวัฒนธรรมเท่านั้น

Follow on Instagram
Facebook