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「日本はワインの国でもある」——ProWine Tokyo 2026が世界に示した、ブドウ畑からのジャパン・ストーリー




「日本はワインの国でもある」——ProWine Tokyo 2026が世界に示した、ブドウ畑からのジャパン・ストーリー
4月15日から17日にかけて、東京ビッグサイトで国際的なワイン・スピリッツの見本市「ProWine Tokyo 2026」が開かれた。23カ国・地域から188社が出展し、会期中のセミナー全22本のうち、7本が日本のワインそのものを主題に据えていた。世界的なワイン評論家ジャンシス・ロビンソンMW(Jancis Robinson MW)氏が「日本ワインの現在地」というセッションに録画形式で参加し、長野・山梨・北海道・熊本のワイナリーが、造り手として登壇した。主催者が総括で挙げた三大トレンドの一つは「日本ワイン」だった。残る二つはロゼワインと南米の台頭である。日本という産地が、グローバルな業界トレンドの議題に正面から並んだことが、2026年4月の東京で静かに記録された。
その数日後、私は北海道余市町の登(のぼり)地区を訪ねていた。
余市町登地区、雪解けの斜面で
札幌から車で1時間あまり、海岸線沿いを西へ進んだあと丘陵を1つ越えると、緩やかな南斜面に等高線に沿ってブドウ畑が刻まれている。そこにあるのが、Domaine Takahiko(ドメーヌ・タカヒコ)である。長野・小布施ワイナリーを営む家に生まれた曽我貴彦(そが・たかひこ)氏が2010年に植樹を始めた畑を軸とする、ピノ・ノワール中心の小さなドメーヌである。
訪れた4月下旬は、まだ雪解けの水が斜面の下を細く流れていて、剪定を終えた畝の上を冷たい風が抜けていた。曽我氏に案内されながら、樹齢の異なる区画を歩く。樹は低く、株間は密。「畑を急がせない」という言葉が何度か繰り返された。代表的なキュベであるNana-Tsu-Mori(ナナツモリ・ピノ・ノワール)が育つ畑である。畑そのものを歩く時間は、ピノ・ノワールという品種にあらかじめ抱いていたイメージが、土と風の側から静かに更新されていく時間でもあった。
「出汁のあるワイン」という、日本ならではの語彙
ブルゴーニュのピノ・ノワールが、石灰質テロワール由来の張りのある酸と、赤い果実の凛とした輪郭で語られるワインだとすれば、ナナツモリのスタイルは、それとは別の場所にある、と多くのソムリエが語る。最初に立ち上がるのは、わずかな鉄分と、椎茸や昆布を連想させる旨味の層。続いて現れるのは、酸の鋭さではなく、ふくよかな出汁感を伴う余韻である、と。フランス語にも英語にも、この感覚をひと言で写し取る語は今のところ見当たらない。日本のワイン評論でも使われてきた「旨味/umami」という言葉が、海外メディアにそのままラテン文字で輸出されているのは、おそらくこのためである。
この「出汁感」については、和食の出汁文化を舌の記憶として育んできた日本人には、ワインの中の旨味成分に気づきやすい感性がある、という見立てがある。グルタミン酸やコハク酸、各種アミノ酸がもたらす旨味や自然な甘み。これらは、長い果皮浸漬や全房発酵、亜硫酸添加を抑えた醸造といった、過度に介入しない造りから生まれてきやすい。Domaine Takahikoのワイン造りには、最低限の二酸化硫黄の使用、古樽中心の熟成、そして畑そのものを土台にした発酵の哲学が静かに据えられている。技術論の側からではなく、舌が育った文化の側からワインを設計するという発想である。これは日本酒の世界で、麹と水と米から逆算してきた職人の発想と、根を同じくしている。
希少さは、目的ではなく結果である
Domaine Takahikoのワインは、いま世界の二次流通市場で、日本のワインとしては並外れた評価を受けている。コペンハーゲンのnomaをはじめとする星付き店のワインリストに載り、香港・台北・バンコク・ロンドンのソムリエが取り合うようになった。日本国内の正規流通だけでは需要を満たしきれず、入手の難しさだけが先に独り歩きしている、というのが正直な現状である。
曽我氏自身は、生産量を急いで増やすつもりはないと語る。畑が許す範囲でしか、樹は答えを返してこない。希少さは設計の目的ではなく、その姿勢の結果として生じている。この姿勢は、北海道余市町に集まりつつある十数軒のワイナリーにも、共通する背骨になっている。日本でこのスタイルを、しかもピノ・ノワールという最も気難しい品種の一つで、これだけの厚みをもって表現できる場所はまだ多くない。市場価格が国際的な水準で語られ始めたのは、その厚みを世界が認めたことの自然な結果でもある。
ProWine Tokyoから、バンコクへの示唆
ProWine Tokyo 2026の会場で、日本ワインのセッションに参加したバイヤーが繰り返し質問していたのは、品種や樽使いではなく、「土地の食文化との関係」だった。バンコクのワインシーンは、ここ数年で急速に成熟してきた。ミシュランガイドタイランド2026では三つ星レストランが2軒を数え、いずれもが精緻なドリンクプログラムを備えている。バンコクのワインリストに、出汁感のある日本のピノ・ノワールが加わるとき、それは品揃えの拡充ではなく、「日本というオリジン」を複数の角度から語る、新しい体験の設計になる。
日本が「ワインの国でもある」ということは、フランスやイタリアの言葉でワインを語ることではない。「出汁」という日本語のまま、世界のソムリエが日本のピノ・ノワールを語り始めている。バンコクのグラスの向こう側に、余市の南斜面と、登地区の冷たい風と、畑に向き合ってきた曽我家二世代の姿勢が、同じ重みで息づいている。それが、2026年4月の東京と、雪解けの余市が、同時に示し始めたことだった。
This article is intended solely to explore the winemaking artistry and cultural heritage of Domaine Takahiko and the Japanese wine tradition, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับศิลปะการทำไวน์และมรดกทางวัฒนธรรมของ Domaine Takahiko และวัฒนธรรมไวน์ญี่ปุ่นเท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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