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「オーガニック」と名乗るまでに三年――ワインのラベルが背負っている時間

ワインのラベルには、産地ごとに異なる有機認証のマークが小さく印刷されている。バンコクに輸入されるボトルも例外ではない。このマークを、多くの人は「このワインは有機農法で造られている」という、いまの状態を示すものとして読む。それは間違いではない。ただし、そのマークが保証しているのは、いまの状態だけではない。その畑が、少なくとも一定の期間、公的な管理のもとで有機農法を続けてきたこと。マークは、その時間も一緒に背負っている。

有機認証には「転換期間(コンバージョン期間)」と呼ばれる待機期間がある。畑を有機農法に切り替えてから、「有機」と名乗れるようになるまでの助走期間のことである。この期間を終えないかぎり、どれだけ有機農法を実践していても、そのブドウから造ったワインに「オーガニック」と書くことはできない。

三年という長さ

EUの有機規則(Regulation (EU) 2018/848)は、作物の種類によって転換期間の長さを分けている。

ブドウは「多年生作物」に分類される。同じ株が何年も同じ場所で生育し続ける作物のことだ。この場合、最初の有機収穫の前に、少なくとも三年の転換期間が必要になる。

一方、野菜や穀物のように毎年植え替える「一年生作物」は、種をまく前に少なくとも二年間、有機の管理下に置く必要がある。基準となる時点が収穫前か播種前かで違うため単純な比較はできないが、規則が定める年数としては、ブドウのほうが一年長い。

この期間はいつから数え始めるのか。規則では、造り手が認証を所管する当局に「有機に切り替える」と届け出た時点が、もっとも早い起算点とされている。実際に農薬をやめた日ではなく、公的な管理の対象になった日から数える。あとから自己申告によって起算日をさかのぼらせることはできない仕組みである。

待っているあいだに起きていること

少なくとも三年に及ぶ転換期間のあいだ、畑ではすでに有機農法が実践されている。しかし規則上、この間に収穫したブドウで造ったワインを「有機」として販売することはできない。

これは造り手にとって難しい期間である。化学的な資材を使わない栽培には手間がかかる。それでも、その手間を表示に反映させることはできない。有機栽培に必要な手間をかけながら、表示のうえでは慣行栽培(化学的な資材を使う一般的な栽培)と区別がつかない。この状態が、少なくとも三年続く。

規則には中間的な措置もある。単一の農産物原料のみを含む植物由来の食品については、転換期間が十二か月を超えていれば「転換中」と表示できる規定がある。ただしこれは「有機」とは別の表示であり、EUの有機ロゴを付けることはできない。

EUオーガニックロゴ(ユーロリーフ)
EUオーガニックロゴ(通称ユーロリーフ)。欧州連合の有機規則にもとづく認証を示す表示で、転換期間中の産品には使用できない。図版は欧州委員会が公開する公式データ(出典)を改変せず、情報提供および教育の目的で掲載している。

「有機ワイン」という言葉は、それほど古くない

時間の話は、もう一段ある。

「オーガニックワイン」という表示制度が始まったのは、2012年8月1日である。EUの実施規則(Commission Implementing Regulation (EU) No 203/2012)によって、ブドウ栽培だけでなく醸造の工程にも有機の規定が設けられ、それを満たしたものだけが「有機ワイン」と名乗れるようになった。

それ以前、有機の対象は畑だけだった。だから当時のラベルには「有機栽培のブドウから造られたワイン」と書かれていた。ワインそのものではなく、原料の話をしていたのである。制度としての「有機ワイン」は、まだ十数年の歴史しか持っていない。

認証は、並ぶのではなく積み上がる

ビオディナミ(有機農法に、月の満ち欠けなど自然の周期を重ねる考え方)の認証を見ると、この時間の構造がさらにはっきりする。

フランスのワイン専用のビオディナミ認証「Biodyvin」は、会員がまずABマーク(フランスの有機認証マーク)の使用要件を満たす有機認証を取得していることを前提としている。そのうえでビオディナミへの転換に四年をかけ、その間の検査に合格して初めて認証が与えられる。検査を担当するのは、認証機関のエコサート(ECOCERT)である。

国際的なビオディナミ認証であるデメテールも、慣行農法からの転換にはおおむね三年を要するとしている。すでに有機認証を三年以上持っている農場では、この期間は短くなる。

有機認証という土台の上に、ビオディナミ認証の要件が重なる。認証のマークは横に並んでいるのではなく、下から積み上がっている。

制度ごとに、待つ長さは違う

ワインに関わる認証は、ほかにもある。それぞれ、根拠にしているものも、待つ長さも違う。

認証根拠対象転換期間前提となる認証
EUオーガニックEU規則(法規)栽培と醸造三年(最初の有機収穫の前)なし
AB(フランス)フランスの表示マーク。基準はEU規則と共通栽培と醸造EU規則に準じるなし
デメテール民間の国際規格農場全体と加工原則三年(すでに有機認証がある場合は短くなる)原則として有機認証
Biodyvin(フランス)民間規格。ワイン専用栽培と醸造四年ABの有機認証
有機JAS(日本)JAS法(法規)栽培と加工三年(最初の収穫の前)なし

日本の有機JASで酒類が対象になったのは、2022年10月からである。

表の「根拠」「対象」「転換期間」は、それぞれの制度が定める基準を示すものである。実際にその基準を満たしているかを確認するのは、また別の役目である。ABやBiodyvinのように、基準の運用を認証機関「エコサート(ECOCERT)」のような第三者機関に委ねている制度もある。デメテールは、国ごとに置かれたデメテール協会が検査を担う。基準を定める団体と、それを検査する機関は、必ずしも同じではない。

この表から見えてくる違いは、三つある。

一つ目は、根拠が法律か、民間の取り決めかという違いである。EUオーガニックと有機JASは法規にもとづく。認証を受けずに「有機」と表示することはできない。一方、デメテールやBiodyvinは民間の団体が定めた規格で、取得するかどうかは造り手の選択による。

二つ目は、単独で取れるか、他の認証の上に乗るかという違いである。EUオーガニックと有機JASは、それだけで取得できる。だがBiodyvinはABの有機認証を持っていることが条件であり、デメテールも原則として有機認証を前提とする。土台があって、その上に積み上がる構造になっている。

三つ目は、待つ長さの数え方である。法規にもとづく制度は「最初の収穫の前に三年」で揃っている。Biodyvinは転換の開始から四年。デメテールは、すでに有機認証を持っているかどうかで長さが変わる。同じ「転換期間」という言葉を使っていても、何を起点にどう数えるかは、制度ごとに違う。

ラベルの時制

有機認証のマークは、そのワインがいまどういう状態かを述べている。それと同時に、その畑が少なくとも一定期間前から有機管理に置かれてきたことも示している。表示は現在形だが、そこには過去形が畳み込まれている。

そして、この時間はあとから足すことができない。栽培する品種を変えることも、醸造の設備を入れ替えることも、決断した年に着手できる。だが転換期間は、原則として必要な時間を経なければならない。必要な転換期間を満たしていない造り手は、今年どれだけ費用をかけても、今年のラベルに有機と書くことはできない。

バンコクには、フランス、イタリア、日本、そして近隣の産地から、それぞれ異なる制度を背負ったワインが集まる。認証のマークが担保しているのは、農法の優劣ではなく、その待ち時間を実際に過ごしたという事実である。ラベルの小さなマークは、畑の履歴書の要約なのである。


This article is intended solely to explain the certification systems and conversion periods that govern organic wine, for informational purposes only, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่ออธิบายระบบการรับรองและระยะเวลาปรับเปลี่ยน (conversion period) ของไวน์ออร์แกนิก เพื่อเป็นข้อมูลความรู้เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ


“「オーガニック」は法的基準、「ナチュラル」は自己申告――ワインの表示をどう読むか” / “「1924年の農業講座」が、いまバンコクのワインリストに現れる理由——ビオディナミという、百年の検証” / “日本語が読めなくても分かる、日本の酒ラベルの見方” / “「日本はワインの国でもある」——ProWine Tokyo 2026が世界に示した、ブドウ畑からのジャパン・ストーリー”

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