甲州は、造りが変わったことで世界に届いた——勝沼の造り手が磨いた「語れる一本」

甲州は、造りが変わったことで世界に届いた——勝沼の造り手が磨いた「語れる一本」

甲州は、香りが穏やかな白ブドウである。ステンレスタンクで低温発酵させるだけでは、酸ばかりが目立つ淡いワインになりやすい。この品種を、味わいのある一本に変えてきたのが「シュール・リー」という醸造法だ。山梨・勝沼で甲州と向き合う造り手たちが、この手法を長く磨いてきた。日本ワインに対する国際的な評価が、この十数年で確かに上がった背景には、売り方の工夫だけでなく、こうした造りそのものの変化がある。

澱の上で育てる

シュール・リーは、発酵を済ませたワインを、澱(おり。発酵を終えた酵母などの沈殿物)と接触させたまま数か月ねかせる手法である。フランス・ロワール地方のミュスカデなどで使われてきた。澱がゆっくり分解される過程で、うま味のもとになるアミノ酸や、口当たりをまろやかにする成分がワインに溶け出す。とがった酸がやわらぎ、味わいの中盤にふくらみが生まれる。

この澱の技法を、甲州で早くから手がけてきた造り手の一社が、勝沼町の丸藤葡萄酒工業(ルバイヤートワイナリー)である。1890年(明治23年)の創業で、四代にわたって続く、勝沼でも最古参の造り手だ。その醸造蔵は、文化庁の日本遺産「日本ワイン140年史」を構成する文化財の一つでもある。ブランド名「ルバイヤート」は、詩人で英文学者の日夏耿之介が、11世紀のペルシャの詩人オマル・カイヤムの四行詩集にちなんで名づけた。甘口が主流だった時代から一貫して辛口の純国産ワインを追求し、日本ワイナリーアワードでも最高評価を受け続けてきた。看板の「ルバイヤート甲州シュール・リー」は、和柑橘や白桃を思わせる香りに、澱由来のふくよかさとシャープな酸を併せ持つ。

甲州という品種

甲州は、山梨・勝沼を中心に、およそ千年にわたり育てられてきたとされる日本固有の品種である。欧州系ブドウを主な祖先としつつ、東アジアの野生種との交雑にも由来するといわれ、果皮は灰色を帯びた薄紅色をしている。甲州から造られるワインは鉄分がとりわけ少なく、魚介と合わせても生臭さが立ちにくい。こうした性質が、和食との相性を支えている。

2010年には、日本の品種として初めて国際ブドウ・ワイン機構(OIV)の品種リストに登録され、EUへ輸出するワインのラベルに品種名として「Koshu」と記載できるようになった。造りの深まりと足並みをそろえるように、国際的な評価も積み上がっていった。2014年にはグレイスの甲州が、英国の権威あるワイン品評会で日本ワインとして初めて地域トロフィーを受賞し、2024年にはサントリーの甲州が最高賞に選ばれた。

勝沼醸造という造り手

同じ勝沼で甲州に向き合うもう一つの造り手が、勝沼醸造である。1937年、創業者が製糸業のかたわらでワイン造りを始めた。現在は三代目の有賀雄二氏が「たとえ一樽でも最高のものを」を掲げて甲州に専念する。垣根仕立てを採用し、収量を制限してブドウの凝縮度を高め、近年は全房発酵や野生酵母、アンフォラ(素焼きの甕)にも挑んでいる。

フラッグシップの「アルガブランカ クラレーザ」は、オーク樽を使わない。ステンレスタンクで発酵させたのち、琺瑯(ほうろう)引きのタンクで澱とともに数か月ねかせる。柑橘と洋ナシの香りに、いきいきとした酸、後味にはわずかな塩気と甲州らしいほのかな苦みが残る辛口だ。2023年産は、国際的なワイン品評会インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)でシルバーメダル(92点)を受賞した。樽に頼らず、甲州の個性をピュアに表現した一本である。

バンコクにとっての示唆

バンコクのファインダイニングで、日本ワインはまだ少数派だ。それでも、下地はある。日本酒や焼酎を通じて「日本産=プレミアム」という認知はすでに根づいており、その延長線上に日本ワインを置くことができる。塩味とうま味が豊かな日本料理に対して、澱の上で育てた甲州ワインの穏やかな酸とうま味は、構造の上で噛み合う。刺身や寿司、出汁を使った料理と合わせても、魚の生臭さを立てない。

もっとも、バンコクにおける日本ワインは、量や普及率だけで価値を測るべきカテゴリーではない。日本のテロワールを、一本ごとの物語として伝えるためのカテゴリーである。丸藤葡萄酒工業が澱に託した時間にも、勝沼醸造が一樽に向き合う姿勢にも、それぞれの造り手の歩みが宿っている。バンコクで日本ワインの変化を読み解くとき、見るべきは流行ではなく、その一本ごとの背景をどこまで語れるかである。


This article is intended solely to explore the winemaking artistry and cultural heritage of Marufuji Winery, Katsunuma Jozo, and the Japanese Koshu wine tradition, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับศิลปะการทำไวน์และมรดกทางวัฒนธรรมของ Marufuji Winery, Katsunuma Jozo และไวน์โคชูของญี่ปุ่นเท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ


“Japan as a Wine Country” / “A Gneiss Vineyard Reshaping the Narrative of Muscadet” / “The Shifting Terroir” / “Two Years of Zero Wine Tariffs”


Related Product(s)

RUBAIYAT Koshu Sur Lie / ARUGA BRANCA CLAREZA

Discover the culture behind every bottle

We share brewery stories, tasting notes and the craft of koji & fermentation — for educational and cultural purposes only.

เราถ่ายทอดเรื่องราวจากผู้ผลิต บันทึกรสชาติ และศาสตร์แห่งโคจิและการหมัก — เพื่อการศึกษาและวัฒนธรรมเท่านั้น

Follow on Instagram
Facebook

Age Verification

This website contains information about alcoholic beverages and is intended for audiences aged 20 and above. Please confirm your age to continue.