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「吟醸造り」を重要無形文化財に|杜氏・農口尚彦氏を保持者とする答申

2026年10月16日、日本の文化審議会は、酒の製法「吟醸造り」を重要無形文化財に新たに指定し、その保持者として石川県の杜氏、農口尚彦(のぐち・なおひこ)氏を認定するよう、文部科学大臣に答申した。農口氏は93歳。認定されれば、一般に「人間国宝」と呼ばれる保持者になる。酒造りのわざが重要無形文化財に指定されるのは、今回が初めてである。
この答申は、一人の杜氏の経歴をたたえるだけのものではない。国が文化財として守る「わざ」の一覧に、「吟醸造り」という酒造りの技術が加わることになる。何が認められ、何が新しいのかを、文化庁の資料に沿って整理したい。
人間国宝は「人」より先に「わざ」を指定する
重要無形文化財の制度では、まず守るべき「わざ」を指定し、そのわざを高い水準で身につけた人を保持者として認定する。人間国宝とは、この保持者の通称だ。対象はこれまで、歌舞伎のような芸能と、陶芸のような工芸技術が中心だった。
制度の改正で、暮らしの中で受け継がれてきた「生活文化」が対象に加わり、今回がその最初の指定になる。同じ日に、華道の「立花」と「京料理(会席)」についても指定が答申され、農口氏を含む3人が、この分野で最初の保持者となる見通しだ。正式な指定と認定は、答申に基づいて文部科学大臣が行う。
日本の酒造りは、2021年に登録無形文化財「伝統的酒造り」となり、2024年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されている。ただ、これらはいずれも酒造り全体を対象にしたもので、国内の登録では、造り手たちの保存会が保持団体として認められていた。今回は「吟醸造り」という一つの技術を名指しし、それを体得した一人の杜氏を保持者に定めた。ここが、これまでとの大きな違いである。
文化庁は「吟醸造り」をどう説明したか
文化庁は吟醸造りを、「手間と原料を惜しむことなく投入することで耽美的な味と香りを追求した酒(吟醸酒)を製造するわざ」と説明している。酒は長い時間をかけて改良され、その過程で、米を削る度合いが酒質と深く関わることがわかった。近代に精米機が発達し、米の外側を大きく削れるようになったことで、このわざが確立したという。
日本の表示基準では、精米歩合60%以下、つまり米の外側を4割以上削った白米を使い、吟醸造りで造った酒が「吟醸酒」と呼ばれる。精米歩合の数字は、吟醸造りを理解する入口の一つになる。
中学校を出て70年余り、蔵を移りながら続けた仕事
文化庁の資料によると、農口氏は1932年、能登杜氏だった父のもとに生まれた。中学校を卒業して酒造りの世界に入り、1949年に酒造工として働き始める。酒母(しゅぼ)係、杜氏の補佐役である頭(かしら)を経て、1961年、28歳で石川県の菊姫の杜氏に就いた。杜氏とは、蔵で酒造りの全工程に責任を負う人のことだ。
菊姫では1998年まで37年間、杜氏を務めた。1967年に全国新酒鑑評会で初めて金賞を受賞し、以後の受賞は計26回にのぼる。1970年代後半以降に広がった吟醸酒への関心を牽引した一人としても知られる。
菊姫を離れたとき、農口氏は60代の半ばだった。しかし、仕事はそこで終わらなかった。1998年から2012年まで別の酒蔵で、2013年から2015年まで農口酒造で杜氏を務め、2017年、80代の半ばで石川県小松市の農口尚彦研究所の杜氏に就いた。答申の資料には、この研究所での仕事が「現在に至る」と記されている。

答申が重く見た「後進」
とはいえ、文化庁が保持者の特徴として挙げたのは、長い経歴や受賞の数だけではない。後進の指導と育成に力を尽くし、多くの杜氏を輩出してきたことも、はっきりと書かれている。2021年には「伝統的酒造り」の保持団体の会員となり、2026年には石川県の無形文化財「日本酒杜氏」の保持者にも認定された。
重要無形文化財の保持者には、わざの錬磨と伝承者の養成に充てる助成金が国から交付される。制度そのものが、わざを次の担い手へ渡すことを前提にしている。認定が行われれば、農口氏はその制度の中で、吟醸造りを伝える役目を担うことになる。
答申を受けて、農口氏は研究所を通じて感謝の意を表しつつ、次のように述べている。
「ただ、私自身の夢は、まだまだ道の途中にあります。」
今回の答申は、吟醸造りを受け渡されるべきわざとして指定し、それを70年以上手がけてきた杜氏に、その担い手の役目を託すよう求めたものだ。
This article explains the recommendation to designate ginjo-zukuri as an Important Intangible Cultural Property and to certify Noguchi Naohiko as its holder, based on documents published by Japan's Agency for Cultural Affairs. It explores the brewing philosophy and cultural heritage of Noguchi Naohiko Sake Institute and the NOGUCHI NAOHIKO brand for educational and cultural purposes only, and does not aim to promote or encourage the purchase or consumption of alcohol. Intended for readers aged 20 and over.
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