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世界のスピリッツ市場が縮むなか、日本のジンは伸びた——IWSC 2026が映し出した評価軸の転換

世界のスピリッツ市場が縮むなか、日本のジンは伸びた——IWSC 2026が映し出した評価軸の転換

世界のスピリッツ市場が縮むなか、日本のジンは伸びた——IWSC 2026が映し出した評価軸の転換

2026年6月、International Wine & Spirit Competition(IWSC)のジン部門の審査結果が公表された。ジンで最高評価にあたる「Gold Outstanding」を獲得したのは、世界でわずか10本。その顔ぶれに、ニュージーランド、台湾、ラオス、そして日本のボトルが並んだ。審査はロンドンで行われ、上位の一角を占めたのは、これまでスピリッツの地図では周縁とされてきた産地だった。

数年前なら驚きをもって迎えられたはずのこの顔ぶれは、いまではむしろ必然として受け止められつつある。世界のスピリッツ市場が調整局面に入るなか、アジアのクラフトスピリッツ、なかでも日本産のジンは、別のベクトルで動いている。その構造を読むことが、バンコクのF&Bバイヤーにとって意味を持ち始めている。

数字の「ねじれ」

2024年から2025年にかけて、世界の大手スピリッツ企業は厳しい局面に置かれた。コロナ禍で膨らんだプレミアム需要が一巡し、流通は積み上がった在庫の調整を迫られた。ウイスキーやウォッカでは出荷の伸びが止まり、急拡大していたテキーラも2025年に入って失速した。市場調査会社のIWSRはこの落ち込みを「循環的なものであり、構造的な崩壊ではない」と位置づけるが、量を前提に組み立てられてきた業界にとって、調整の重さは小さくない。英国の業界誌『The Drinks Business』が2026年4月に掲載した記事の見出しが、状況を端的に示している。「なぜ日本のジンは、世界的な不況のなかで好調なのか」。

日本のジンは、まったく異なる軌道を描いた。日本洋酒酒造組合の「洋酒移出数量調査」によれば、国内のジンの出荷量は2018年の約127万リットルから、2023年には約498万リットルへと5年で約3.9倍に拡大し、2024年はおよそ553万リットルに達している。世界の市場が縮むなかで記録されたこの伸びは、偶然では説明しにくい。

なぜ大手が苦しむなかでクラフトが伸びるのか

背景には構造がある。規模が大きくなるほど、ブランドは「物語の鮮度」を保ちにくくなる。世界中で見慣れた銘柄ほど、「なぜこれを選ぶのか」という問いへの答えが語られにくくなる。需要が高まった局面で急拡大したブランドは、需要が落ち着いたあとに、選ばれる理由をもう一度語り直す必要に直面している。

日本のクラフトジンの多くは、生産量が限られている。京都蒸溜所の「KI NO BI」、奈良・梅乃宿酒造の「UMENOYADO GIN」、岡山・宮下酒造の岡山蒸留所、広島・桜尾蒸留所、沖縄のまさひろ酒造、八海醸造が北海道で営むニセコ蒸溜所など、各地の銘柄や蒸留所は、その土地の植物を生かした個性があり、ロットが小さいぶん仕込みごとに表情が変わる。柚子、山椒、緑茶、紫蘇、桜の花といったボタニカルはそれぞれの産地の風土を映し、ロンドン・ドライという伝統的な様式とは異なる形で、その土地にしかない香りが立つ。こうした香味は、大量生産では再現しにくい。

評価軸が変わる

今年のIWSCが注目されるのは、上位にアジア太平洋地域のボトルが入ったからだけではない。台湾、ラオス、ニュージーランドといった、これまで目立たなかった産地が、国際的な審査で認められた意味は大きい。「どこの国か」より、「なぜそのボタニカルなのか」「なぜその土地の水なのか」が、審査講評の言葉として前面に出てきた。ワインで語られてきたテロワールの概念が、スピリッツの評価にも浸透しつつある。

こうした変化は、バイヤーの判断にも波及する。国際的な品評会での実績は、バーや飲食店が銘柄の背景を語るときの客観的な手がかりになる。

バンコクのF&Bバイヤーが読むべき転換点

バンコクのプレミアム・バーやファインダイニングでは、この数年でスピリッツの提供水準が急速に高まってきた。世界の銘柄を並べるだけでなく、産地の個性を語れる品ぞろえをつくろうとする動きがある。そのなかで、日本のクラフトジンが独自の位置を得やすい背景には、三つの要因が観察される。

ひとつめは、国際的な評価の厚みだ。IWSC 2026でのGold Outstandingという評価に、東京で開かれるTWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)など、アジア圏の品評会での評価が重なることで、複数の視点から認められたという文脈が生まれる。ふたつめは、蒸留所ごとに語れる物語があること。創業者の哲学、地域の植生、少量生産であることは、スタッフが顧客に伝えられる具体的な内容になる。三つめは、アジア料理との親和性だ。山椒や柚子の香りは、タイ料理や和食の香味の組み立てと相性がよい。

世界の銘柄が並ぶ棚のなかで、産地の物語と国際的な評価を併せ持つクラフトジンの存在感が増している、という見方もできる。

規模ではなく、固有性で

IWSC 2026の受賞結果は、あくまで一つの品評会の評価にすぎない。だが、それを市場が調整局面に入ったタイミングと重ねると、読み取れるものがある。大量消費が収縮に向かうとき、選択の基準は「どれだけ売れるか」から「なぜこれを選ぶのか」へと移っていく。

ロンドンで行われた審査で最高評価を得たジンの一つ、北海道・ニセコ蒸溜所の「ohoro GIN(オホロ ジン)」も、その流れのなかにある。スピリッツの地図の周縁とされてきた場所が、評価の中心に置かれた。その事実そのものが、次の時代の輪郭を静かに描いている。


This article is intended solely to explore craft spirits industry trends and the cultural heritage of Japanese craft distilling, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับแนวโน้มอุตสาหกรรมสุราคราฟท์และมรดกทางวัฒนธรรมของการกลั่นแบบญี่ปุ่นเท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ


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