
「すっきり」の時代に、あえて濾さない──球磨の「麦汁」、フランスと日本でダブル受賞
いまの麦焼酎は、「すっきり、クリア」な味わいが主流である。雑味を抑え、軽やかで飲みやすいことが、一つの正解とされてきた。
その流れに、あえて逆らう麦焼酎がある。熊本県・球磨の豊永酒造(1894年創業)が造る「麦汁(むぎしる)」だ。名前のとおり、麦そのものの香ばしさと、ふくらみのある旨味を、惜しみなく一本に閉じ込めている。
フランスと日本、二つの審査会が同じ年に認めた
その個性は、2026年、性格のまったく異なる二つの審査会で、同じ年に評価された。
一つは、フランス・パリで開かれる「Kura Master」。ソムリエをはじめとするフランスの食のプロが審査する大会で、麦汁は麦焼酎部門の審査員賞とプラチナ賞を受賞した。
もう一つは、日本国内で開かれる「TWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)」。ウイスキーやスピリッツの専門家が審査する大会だ。麦汁には、定番の25度と、冬限定の原酒(44度)がある。TWSC 2026では、その原酒が最高金賞、定番の25度が金賞を受賞した。
フランスの食のプロと、日本の洋酒の専門家。評価の物差しがまるで違う二つの審査会が、同じ年に麦汁を高く評価した。これは、麦汁の個性がいかに明確であるかを物語っている。
なぜ、流行と逆を行くのか
麦汁の味わいは、三つの「逆張り」ともいえる選択から生まれている。
一つ目は、原料だ。一般的な二条大麦ではなく、国産のはだか麦を100%使う。それが、穀物の外皮を思わせる深い香ばしさの源である。
二つ目は、蒸留。麦焼酎の多くが、軽やかに仕上がる「減圧蒸留」を採用する。麦汁が選んだのは、その対極にある「常圧蒸留」だ。高温で蒸留することで、麦の旨味や香りを、力強く引き出す。
三つ目は、濾過。通常、雑味のもとになる成分は、濾過の工程で取り除かれる。しかし麦汁は、あえて濾過しない。一般には「いらないもの」とされる成分まで、麦の個性として残す。引き算でも足し算でもない、「残す」という決断である。
土づくりから始まる、130年の蔵
この逆張りを支えているのは、球磨川の源流に近い土地で、130年以上続く蔵の哲学だ。
4代目の豊永史郎氏は、1986年、業界が効率化へ向かうなかで、有機栽培への移行を決断した。「焼酎は、土づくりから」。自社の田畑だけでなく、地域の契約農家も巻き込み、2001年には有機認証を取得している。流行を追うのではなく、足元の土と向き合う。その姿勢が、麦汁の揺るぎない味わいの土台になっている。
バンコクで読み解く麦汁
麦汁は、力強い旨味と香ばしさによって、チリ、ナンプラー、ライムといった強い香味を持つタイ料理のなかでも埋もれにくいという、味わい上の特徴を備えている。
「すっきり」が正解とされる時代に、あえて麦の野性味を残した一本。フランスと日本、異なる二つの物差しが認めたその個性は、バンコクで日本の焼酎文化を読み解くうえでも、一つの手がかりになるはずだ。
This article is intended solely to explore the distillation philosophy and cultural heritage of Toyonaga Distillery (the producer of Mugishiru) and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับปรัชญาการกลั่นและมรดกทางวัฒนธรรมของโรงกลั่น Toyonaga (ผู้ผลิต Mugishiru) เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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