
球磨の大地から掘り出された麦──豊永酒造「麦汁」と、Kura Master 4度金賞の系譜
すっきりクリーンに磨き上げる。それが現代の麦焼酎の多くが志向している方向である。だが、その潮流に真っ向から逆らう一本がある。熊本県球磨郡湯前町の豊永酒造が手がける「麦汁(むぎしる)」。1894年(明治27年)創業、130年超の歴史を持つ蔵が、麦本来の重厚な香ばしさと旨味をそのまま立たせる、引き算の美学とは正反対の設計を持つ焼酎である。
1894年の球磨、1986年の決断
球磨川の源流に近い湯前町で、初代・豊永鶴松によって創業された豊永酒造は、球磨焼酎の地理的表示(GI)に指定された地域で、一世紀以上にわたって伝統的な酒造りを守り続けてきた。
転機は1986年。4代目当主の豊永史郎氏が、業界の大量生産・効率化の流れに逆行し、原料となる麦の有機栽培への完全移行を決断した。「焼酎は土づくりから」という哲学のもと、自社田だけでなく地域の契約農家にも取り組みを広げ、2001年のオーガニック認証制度開始時には、自社田と契約農家のすべてで認証を取得している。土と向き合って40年近く。その積み重ねが、麦汁という一本の輪郭を支えている。
はだか麦×常圧蒸留×完全無濾過
麦汁の設計の核は、業界の主流(二条大麦×減圧蒸留×濾過)と真逆の三つの選択の重なりにある。
第一に、国産はだか麦100%。一般的な二条大麦ではなく、ハルヒメボシを主体とするはだか麦を採用する。穀物の外皮を感じさせる、トーストしたパンのような深い香ばしさが生まれる。
第二に、常圧蒸留。減圧蒸留がクリアで軽快な酒質を引き出すのに対し、常圧蒸留は高級アルコール類やエステル類、油分を豊富に留出させ、強靭な骨格を形成する。
第三に、完全無濾過。通常の工程ではマスキングされてしまう麦由来の香ばしさ・甘み・複雑な香気を、そのまま瓶のなかに封じ込める設計である。
アルコール度数は25%。麦麹を用い、1年熟成させることで、ふくらみのある甘さと長い余韻が一本のなかで重なり合う。
Kura Master 4度金賞、そしてTWSC「Best of the Best」
国際的な品評会でも、この野性的な設計は高く評価されてきた。
フランスのソムリエが審査するKura Masterでは、2021年から2023年まで3年連続で金賞を獲得し、2025年にも金賞を獲得している。フランスの審査員は「これまでにない麦本来の香りを表現しており、麦の芳醇な味わいを深く楽しむことができる」「無濾過という選択がもたらした個性が極めて高い」と評する。
東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)でも、2022年から2025年まで4年連続で金賞を獲得している。さらに2025年には、麦汁の限定品「原酒44度」が、出品された全829アイテムの頂点に立つ「Best of the Best」を受賞している。
フランスのソムリエ、ウイスキー専門家、そして国内の鑑評会の審査員。異なる文化圏の審査員たちが、この一本をこれだけ繰り返し高く評価していることは、設計の一貫性が偶然ではないことを示している。
バンコクで読み解く麦汁
麦汁の特徴は、具体的な飲み方の提案ではなく、はだか麦、常圧蒸留、完全無濾過が重なって生まれる香味構造として捉えるべきである。麦由来の香ばしさ、旨味、油分を含む厚みは、チリ、ナンプラー、ライム、炭火香など、タイ料理を構成する強い香味要素と比較しても埋もれにくい設計として説明できる。
1894年から続く球磨の蔵が、有機栽培と完全無濾過という難しい条件の組み合わせで世に問う一本である。バンコクでは、飲用シーンの演出ではなく、日本の焼酎文化、球磨焼酎GI、有機栽培、無濾過という選択を読み解く入口として位置づけたい。
This article is intended solely to explore the production philosophy and cultural heritage of Toyonaga Distillery and its honkaku barley shochu Mugishiru, including the 1894 founding in the Kuma district, the 1986 transition to organic barley farming led by Shiro Toyonaga, the unfiltered atmospheric distillation method, and the international recognition through Kura Master Gold Awards and the TWSC 2025 “Best of the Best” award for Mugishiru Genshu 44%, and is not intended to promote or encourage the consumption of alcohol./ บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับปรัชญาการผลิตและมรดกทางวัฒนธรรมของ Toyonaga Distillery และโชจูบาร์เลย์ Honkaku “Mugishiru” รวมถึงการก่อตั้งในเขต Kuma เมื่อปี 1894 การเปลี่ยนผ่านสู่การทำเกษตรอินทรีย์ในปี 1986 ภายใต้การนำของ Shiro Toyonaga วิธีการกลั่นแบบไม่กรองและกลั่นที่ความดันบรรยากาศ และการได้รับการยอมรับในระดับสากลผ่านรางวัล Kura Master Gold Awards และรางวัล “Best of the Best” ของ TWSC 2025 สำหรับ Mugishiru Genshu 44% เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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