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梅酒づくりは、漬ける前から始まっている|紀州本庄うめよしに見る、梅農家の三つの判断

梅酒は、梅を酒と糖類に漬ければできる。家庭でも造られてきた酒なので、そう考える人は多いかもしれない。しかし、梅を育てる側から見ると、仕事はもう少し手前から始まっている。
和歌山県みなべ町の紀州本庄うめよしは、梅を育て、梅干しを造り、2009年からは梅酒も造っている。代表取締役の山西善信さんへの書面取材をもとにBGが公開した特集記事では、山西さんの仕事が判断の積み重ねとして描かれた。ここでは、そのうち梅酒の仕上がりに関わる三つの判断を、梅酒に詳しくない人にも分かるように整理する。
1|いつ採るか|同じ木でも、熟し方はそろわない
最初の判断は収穫日だ。同じ木になった実でも、熟す速さは実ごとに違う。山西さんは収穫期の朝、実の色や艶、触れたときの柔らかさ、香りを確かめる。南高梅がまだ青く硬ければ待ち、黄色みと艶が出てくれば、今日採ったほうがよいと判断することもある。
見ているのは今の状態だけではない。この後どう熟していくかまで見越して決める。「あと一日待つか、今日採るか」という山西さんの言葉は、この判断が数字だけでは決めきれないことを示している。
梅を仕入れる造り手では、この収穫の判断を自社だけで担えない場合もある。うめよしでは、梅の木を見る人と梅酒を仕込む人が同じ会社の中にいる。
2|いつ仕込むか|採った後も、梅は変わり続ける
ただし、収穫で判断が終わるわけではない。採った梅は、その後も状態が変わっていく。うめよしは収穫した梅をできるだけ早く梅酒に仕込む。一方で、露茜(つゆあかね)という品種については、収穫後にさらに熟させる「追熟」をどこまで進めるかを見極めている。
露茜は、梅とスモモを掛け合わせて生まれた品種で、果皮だけでなく果肉まで赤く色づく。南高梅と同じ扱いが適しているとは限らない。品種が違えば、仕込みまでの判断も変わる。
収穫期は、畑の作業と選別、仕込みが重なる時期でもある。まとめて処理すれば作業は進めやすい。それでも山西さんは、自分たちがよいと判断した梅の状態を、作業の都合だけで損ないたくないと話している。
3|どう仕上げるか|ろ過に、人の手を残す
三つ目の判断は、漬け終えた梅酒を仕上げる段階にある。ろ過とは、梅酒をこして、濁りのもとになる細かな粒を取り除き、仕上がりを整える工程だ。ろ過を助ける加工助剤を使えば、より短い時間で処理できる。
うめよしは、その方法を選ぶこともできた。しかし、加工助剤を使わず、時間をかけて手作業で少しずつろ過している。山西さんは取材に「正直、手間もかかりますし、効率はよくありません」と答えた。
それでも残したいのは、梅の味と香りだという。透明に整えることだけを目標にせず、一年かけて育てた梅をどう仕上げるかを優先している。その分、同じ時間で造れる量には限りがある。山西さんは、それを悪いことだとは考えていない。
手作業そのものが目的なのではない。梅の状態を見て、自分たちが納得できる方法を選んだ結果として、人の手が残っている。
判断を一貫して担えることが、別の造り手との仕事を生んだ
三つの判断を一つの会社で担えることは、別の造り手と組むときにも意味を持った。京都の酒蔵、佐々木酒造の社長と話したとき、話題になったのは、仕入れる梅の状態が毎回違うなかで梅酒の仕上がりをそろえる難しさだった。
そこで山西さんは、うめよしで梅酒を造らせてほしいと申し出た。どの実を育て、いつ採り、どの状態で仕込むかまで、自分たちで判断できると考えたからだ。佐々木酒造の日本酒とうめよしの南高梅を合わせた試作から、縁 梅酒(ENISHI Umeshu)が生まれた。「縁」という名前は、この出会いに由来する。
梅酒の仕上がりは、瓶の中だけで決まるわけではない。木の前で一日待つかを決める朝から、ろ過にどれだけ時間をかけるかを決める工程まで、いくつもの判断が重なっている。うめよしでは、収穫、仕込み、ろ過に関わる判断を同じ会社の中で一貫して担い、梅の状態を見ながら次の工程を決めている。
山西さんの家族の歩みや、海外の取引先との付き合い、会長から受け継いだ言葉は、特集記事「梅を見て、今日を決める」で紹介している。
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