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焼酎は「仲間外れの存在」だった。NYCの独学ミクソロジストの方法論を、バンコクの棚で実装する


焼酎は「仲間外れの存在」だった。NYCの独学ミクソロジストの方法論を、バンコクの棚で実装する
ニューヨークでツアーガイドと父親業を本業としながら、独学でカクテルを研究しているミクソロジストがいる。彼がある業界媒体に寄せた一文は、焼酎を取り巻く現状を率直に言い当てている。
「ウイスキー、ジン、メスカルなら仲間内でアイデアを投げ合える。でも焼酎は仲間外れの存在(odd duck out)だ」
何でも揃うはずのニューヨークにおいても、焼酎をメニューの中心に据えるバーは数えるほどしかない。West VillageのKatana KittenとIndustry CityのOldies。彼が例外として挙げるのは、実質この2軒だけである。
彼の方法論はシンプルで、応用が効く。各焼酎を、よく知るベーススピリッツと比較する。そのスピリッツで自分ならどんなカクテルを作るかを考える。そして古典を逆算して、焼酎が主役になるよう他の材料を調整する。ここでは彼の3つのレシピを、Bacchus Globalがバンコクで扱う3本に置き換えて読み解いてみたい。
ノマノマ 麦 × フィフティ・フィフティ・マティーニ
彼が最初に手に取ったのは、佐賀のある麦焼酎だった。バラの香りと強い花香があり、口当たりにはシャンパーニュ酵母を思わせる質感が残る。彼はこれを「ジュネヴァ、あるいは熟成していないハイモルトウイスキー」に近いと捉え、フィフティ・フィフティ・マティーニに応用した。
BGの棚で同じ役を担えるのは、鹿児島・白金酒造の **ノマノマ 麦** である。吟醸酵母で仕込まれた麦焼酎で、Kura Master 2024金賞を受賞している。吟醸酵母がもたらす華やかな香りと、麦由来のやわらかな厚みは、彼が書き留めた「花香+モルト」の構造とそのまま重なる。これをドライベルモットと1対1で合わせ、レモンピールのオイルを絞る。「柚子があれば、柚子を絞りたかった」と彼は書き添えていた。バンコクでは、その一文はそのまま実現可能な注文書になる。
蕎麦和尚 8年シェリーカスク × オールドファッションド
2本目は蕎麦焼酎。彼のノートには「チョコレート、カカオ、トースティなモルト爆弾」と記されている。彼はこれを使ってオールドファッションドを組んだ。シンプルシロップはバースプーン1杯弱、アンゴスチュラビターズを1ダッシュだけ、大きな氷、オレンジピール。「蕎麦ミルクで作った大人のチョコレートミルクシェイクのよう」と、彼はこれを”Far East OF”と名付けた。
BGの棚には、この描写そのものといえる1本がある。Guild Seriesの **蕎麦和尚 8年シェリーカスク** である。8年間シェリー樽で静かに熟成された蕎麦焼酎で、ドライフルーツとカカオの層がオーク由来の甘い陰影と折り重なる。彼のレシピをそのままこの蕎麦焼酎に当てはめれば、原典のFar East OFよりさらに一段深い余韻が引き出せるはずだ。蕎麦の香ばしさとシェリーの熟成香は、まさにオールドファッションドのグラスの中で出会うべき組み合わせである。
なかむら × Japanese Siesta
3本目は芋焼酎。彼は一口目で「柔らかなバニラを思わせるテキーラのようだ」と感じ、テイスティングパートナーは赤ピーマンのニュアンスを検出した。その瞬間、彼の頭に浮かんだのは、かつてNYCのある伝説的なバーテンダーが考案したSiestaというカクテルだった。ブランコテキーラ、ライム、グレープフルーツ、シンプルシロップと少量のカンパリで組む一杯である。彼はこれを”Japanese Siesta”に組み替え、芋のバニラ的な甘みと植物的な余韻を主役にするため、カンパリをごく控えめに落とした。
BGの棚でこの役を担えるのは、鹿児島・中村酒造場の **なかむら** である。九州に3蔵しか現存しない石室(いしむろ)での麹造りを守り続ける蔵で、酒質は「なめらかで、繊細で、芳しく、気品があり、豊潤」と評される。テキーラの代替としての芋焼酎、という彼の文脈に、この上品さは静かに応えてくれる。Siestaの快活さはそのままに、余韻だけが琥珀色にくぐもる。そういう一杯が、バンコクの夜に浮かぶ。
「仲間外れ」は、土地が変われば主役になる
彼の記事が正直なのは、ニューヨークという巨大都市の実情を隠さないところにある。焼酎を学べる場所が少なく、仲間を見つけにくく、だから独学で古典を逆算するしかない。そういう実装記録として読める文章だ。
バンコクでは、この風景は少し違って見える。2026年2月にオープンしたKOUJI ALCHEMIST by salon du japonisantは、麹を軸にした日本産スピリッツの体験型バーとして、彼がNYCに足りないと書いた「焼酎とカクテルを学べる場」を、まさに都市のなかに立ち上げようとしている店だ。その方法論を、Bacchus Globalが実際に扱う銘柄に落とし込んで具体化していく場所でもある。
NYCで「仲間外れの存在」と見なされていた焼酎が、バンコクでは主役になりつつある。その距離は、地理ではなく、文化的な好奇心の深さによって測られる。あるミクソロジストが独学で書き留めた古典の置き換え方は、バンコクという別の都市で、ノマノマ、蕎麦和尚、なかむらという3本を通じて、すでに具体化されつつある。
This article is intended solely to explore distillation techniques and cultural heritage of Japanese shochu, specifically NOMA NOMA Mugi (Shirakane Distillery), SOBA-OSHO Sherry Cask 8 years (Guild Series), and NAKAMURA (Nakamura Distillery), and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับเทคนิคการกลั่นและมรดกทางวัฒนธรรมของโชชูญี่ปุ่น โดยเฉพาะ NOMA NOMA Mugi (Shirakane Distillery), SOBA-OSHO Sherry Cask 8 years (Guild Series) และ NAKAMURA (Nakamura Distillery) เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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