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「1924年の農業講座」が、いまバンコクのワインリストに現れる理由——ビオディナミという、百年の検証

「1924年の農業講座」が、いまバンコクのワインリストに現れる理由——ビオディナミという、百年の検証

2026年2月、ワイン業界誌『The Drinks Business』が「リジェネラティブ農業(再生型農業)の運動に亀裂が走っている」と報じた。持続可能な農業を掲げる共同戦線の内側で、「何をもって再生とするか」という解釈の食い違いが表面化してきたという。

その波紋のなかで、ひとつの農法が静かに存在感を増している。「ビオディナミ」である。

1924年、ひとりの哲学者が農場を変えた

ビオディナミの起源は、1924年にさかのぼる。オーストリアの哲学者ルドルフ・シュタイナーが、当時ドイツ領だったコーベルヴィッツ(現ポーランド)で行った8回の農業講座だ。

シュタイナーが説いたのは、作業の改善ではなかった。「農場はひとつの生命体であり、外から資材を投入して管理するのではなく、内側で循環する有機体として機能させるべきだ」という根本からの転換だった。

実践の柱は二つある。月や惑星の運行に基づく作業暦と、土を活性化させる調合剤(プレパレーション)だ。代表的なのが、牛の角に牛糞を詰めて冬のあいだ土中で熟成させた「500番」と、粉砕した石英を角に詰めて土中で寝かせた「501番」である。外から買った資材を投入するのではなく、その土地の素材を循環させる。その思想が、ここに凝縮されている。

この農法の国際認証「デメテール」は、一般的な有機認証よりも踏み込んだ基準を設ける。合成農薬や化学肥料に頼らないことを前提に、農場全体の生物多様性、土地の自立した循環、造り手の関与の深さまでが審査される。長年にわたり、その厳密さが認証への信頼を支えてきた。

「亀裂」が、独自性を浮かび上がらせた

『The Drinks Business』が報じた再生農業をめぐる対立は、ビオディナミにとって皮肉な追い風になっている。

再生農業は、ここ数年で急速に広まった。土をよみがえらせ、炭素を蓄え、生態系を立て直す。理念は美しい。だが、国際的に統一された定義や第三者認証がまだ十分に定着していないため、「再生」を掲げるだけの取り組みも広がった。何が本質的な実践で、何がラベルにすぎないのか。その問いが、生産者のあいだに対立を生んでいる。

一方のビオディナミは、1924年の思想的な出発点を受け継ぎ、1928年に始まったデメテール認証という検証の仕組みを、ほぼ一世紀にわたって保ってきた。「何が本物か」が市場で問われるとき、この一世紀の検証実績は、それ自体が答えになる。気候変動の圧力が産地の条件を変え続けるなか、「農場が生きているか」という問いは、気候への適応という側面も持ちはじめている。

バンコクに届く「物語の需要」

ロワールのニコラ・ジョリー、ブルゴーニュのドメーヌ・ルフレーヴ、アルザスのツィント=フンブレヒト(Zind-Humbrecht)。著名なビオディナミ生産者の名は、バンコクのワインシーンでも知られるようになって久しい。

背景にあるのは、飲み手の変化だ。Bloombergが「New Drinkers」と呼ぶ新しい層は、ワインを「嗜好品のカテゴリー」としてではなく、「生産者の選択の結果」として理解しようとする。どんな農法か、どの認証を受けているか、どのヴィンテージか。それが会話の起点になる時代だ。欧州の生産者も、単なる輸出先としてだけでなく、バンコクのソムリエや飲食業のプロと専門的な対話ができる市場として、この街を見はじめている。

この文脈でビオディナミは、「差別化のラベル」ではなく、「なぜこの土地からこのワインが生まれるのか」を語るための語彙として働きはじめている。

麹に通じる姿勢

ビオディナミの核心は、逆説的な態度にある。コントロールを手放し、生態系の論理に委ねる。農薬で雑草を一掃するのではなく、土の微生物を豊かにし、植物が自分で育つ条件を整える。

この姿勢は、麹を扱う発酵の現場に通じる。蒸した米に麹菌を付ける杜氏の仕事も、「管理する」というより「菌が育つ環境を整える」行為だ。発酵を急がせれば均質な製品は量産できる。だが、それが「蔵の個性」や「土地の記憶」を生むかは、別の問いである。両者が共有するのは、「微生物に場を与え、その働きを引き出す」という哲学だ。

「サステナブル」という言葉が広まるほど、その言葉だけでは差別化の効果が薄れていく。代わりに効きはじめているのが、物語の密度だ。いつ、誰が、何のためにその農法を選び、それがワインのなかにどう表れているか。百年前に生まれた農業哲学が、いまバンコクのワインリストに現れる理由は、そこにある。


This article is intended solely to explore the philosophy of biodynamic viticulture and its relevance to the premium wine market in Bangkok and Asia, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับปรัชญาการทำเกษตรแบบไบโอไดนามิกและความสำคัญต่อตลาดไวน์พรีเมียมในกรุงเทพและเอเชียเท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ

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