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田んぼまで広がる酒蔵の仕事|七賢から考える日本酒の「ドメーヌ化」

秋の田んぼで農家と若い成人スタッフ二人が稲穂を確かめる浮世絵風のイラスト。背景に山並みと水路。

日本酒の原料欄に記された米。その米を誰が育てたのかまでたどると、酒蔵の仕事が違って見えてくる。米を選んで仕入れることに加え、自分たちで田んぼを管理し、収穫するところから酒造りに関わる蔵もある。

こうした動きは、ブドウ栽培から醸造までを担うワインの造り手になぞらえ、日本酒の「ドメーヌ化」と呼ばれている。土地の名前を商品に添えるだけでなく、その土地で原料を育てる仕事を引き受ける変化だ。

七賢の米作りを支える、地域の知識

山梨県北杜市で「七賢」を醸す山梨銘醸も、その一例である。2026年10月の報道によると、同社は農業振興公社から借り受けた田んぼを自社で管理し、酒米「夢山水」を栽培したという。面積は135アール、ヘクタールに換算すると1.35ヘクタール。6トンを収穫し、翌年は4.5ヘクタールへの拡大を計画している。

背景には、農家の高齢化と、酒米を安定して確保するという課題があった。新たに採用した20代の社員2人が、地元農家の指導を受けて栽培に取り組んだという。

七賢の米作りは、2026年に始まったわけではない。蔵元の沿革には、1999年に農業法人を設立し、地元農家と生産者グループを結成して、原料米の栽培を始めたと記されている。今回の報道は、その歩みを踏まえて読みたい。

今回報じられた自社管理の田んぼでの栽培も、地元農家の知識に支えられている。自社栽培という言葉からは、蔵だけで完結する姿が浮かびやすい。しかし、若い社員が農家から学ぶという具体的な仕事には、地域との協力が表れている。

同じ水の由来を、田んぼと仕込みでたどる

報道では、この田んぼで米を育てる水と、七賢の仕込み水は、いずれも甲斐駒ヶ岳の伏流水に由来すると紹介されている。山からの水が稲を育て、酒造りにも使われる。そのつながりを、具体的な場所を通して説明できる点が興味深い。

ただし、水の由来が共通することだけで、完成した酒の香りや味が決まるわけではない。米をどの程度磨くか、麹や酵母をどう使い、どのように発酵させるか。田んぼから先にも、造り手の判断は続く。

山口県宇部市の永山本家酒造場は、「純米大吟醸 ドメーヌ貴」に、蔵から5キロ圏内でスタッフが栽培する山田錦を使うと説明している。ここでは、どこで、誰が育てた米かが、商品と結び付けて示されている。

今回報じられた七賢の栽培の取り組みと、特定の商品に自社栽培米を使うという説明は、区別して読みたい。蔵の取り組みが分かっても、既存の七賢の全商品が、その年に収穫した米へ切り替わったとは言えないからだ。

「地元産」と「自分たちで育てた米」の違い

地元の農家から米を購入すること、契約農家と栽培を進めること、自社で田んぼを管理すること。いずれも土地との関わり方だが、担う作業と責任は異なる。

自社栽培なら、栽培中の判断や収穫までの作業も、蔵の仕事に加わる。一方、農家と蔵がそれぞれの技術を持ち寄る分業にも意味がある。「ドメーヌ」という言葉だけで、どちらが優れた酒造りかを決めることはできない。

バンコクで日本酒の背景を紹介するときも、この違いは説明の手がかりになる。「土地を表す酒」という言葉に、誰が米を育て、蔵がどこまで栽培に関わったのかを添える。商品ごとの使用米まで確かめれば、蔵全体の方針と、目の前の一本の情報も混同せずに伝えられる。

米の品種名の先に、田んぼがあり、育てる人がいる。七賢の取り組みが伝えるのは、土地を語る言葉が増えたことだけではない。これからも酒を造るために、米を育てる仕事を地域とどう続けていくか。その問いが、酒蔵の仕事を田んぼまで広げている。


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