Perspectives
チーズと日本酒が響き合う理由――発酵という共通の変容

バンコクのビストロで、ワインとチーズの組み合わせはもう珍しくない。輸入ワインが広く流通するようになって以降、高品質なナチュラルワインとともに欧州産チーズを扱う飲食店は着実に増えている。だが、どちらも発酵によって生まれるものでありながら、チーズと日本酒の組み合わせはまだ体系的に語られることが少ない。
理由の一つは、単純に接点の少なさである。日本酒を扱う店とチーズを扱う店は、これまで業態として分かれていた。国際色豊かなバンコクの食市場でワインとチーズの文化が定着するにつれ、同じカウンターに日本酒を並べる余地も生まれつつある。チーズを軸にしたペアリングの場で、日本酒はどのような位置を占めうるのか。その論理を整理する。
二つの分解が、別々の場所で進んでいる
日本酒の製造では、麹菌由来のアミラーゼが米のデンプンを糖へ、プロテアーゼやペプチダーゼが米タンパク質をペプチドやアミノ酸へ分解する。これらの一部が、発酵後の日本酒に旨味やコクをもたらす。
チーズ熟成でも似た過程が進む。凝乳酵素や乳酸菌、表面微生物などに由来する酵素がカゼインを分解し、ペプチドや遊離アミノ酸を生む。これらは熟成香や味わいの形成に関与する。
香りの分子が一致するかどうかを照合するペアリング理論とは異なり、ここにあるのは「タンパク質を分解してアミノ酸を生む」という、変容のたどり方そのものの類似である。片方は米粒の内部で、もう片方は凝乳の内部で、同じ種類の分解が別々に進んでいる。この並行性は、チーズと日本酒の組み合わせを読み解く一つの見立てになる。
酒質によって、重なり方が変わる
日本酒のスタイルとチーズの種類を並べると、重なり方の違いが見えてくる。
吟醸酒は、低温での発酵によって生まれるエステル系の華やかな香りを持ち、酸味も比較的すっきりしている。モッツァレラのように乳味が軽く塩分が控えめなフレッシュチーズは、この繊細な香りを覆わない。互いの輪郭を保ったまま重なる関係である。
醸造アルコールを加えない純米酒は、米由来のふくよかな旨味を持つ。コンテのような熟成セミハードチーズが持つナッティな甘みと旨味は、純米酒のふくよかな旨味と味わいの重心が近い。
山廃・生酛仕込みは、酒母の段階で蔵の環境に由来する乳酸菌の働きを生かし、乳酸を自然に蓄積させる製法である。仕上がる酒には複雑な酸味と奥行きが加わりやすい。エポワスのようなウォッシュタイプのチーズは、塩水で表面を洗いながら、表面に形成される酵母・細菌叢の働きによって外側からタンパク質や脂質の分解が進む。日本酒とは別の経路をたどりながらも、微生物と時間が香味の複雑さをつくる点では同じ方向を向いている。
長期熟成させた古酒では、糖とアミノ酸が関わる反応や緩やかな酸化が重なり、シェリーを思わせる複雑さが現れることがある。ロックフォールのような青カビ系チーズが持つ塩気と苦味の層は、古酒の熟成由来の深みと並べたときに互いの重みを受け止め合う。
タンニンの影響が小さいという特徴
ワインとチーズの組み合わせでは、赤ワインのタンニンがチーズの脂肪やタンパク質と作用し合い、渋みの感じ方が変わることがある。白ワインや微発泡ワインがチーズに合わせて選ばれやすい理由の一つは、ここにある。
日本酒は米を主原料とし、ワインのようにタンニンを多く含むブドウの果皮や種子を用いないため、ワインに比べてタンニンがきわめて少ない。米にもフェノール性の成分はわずかに存在するが、タンニンとは別の系統の化合物であり、両者を同一視することはできない。渋みが強調される場面が少ないという傾向は、乳酸・コハク酸・リンゴ酸などによって形づくられる穏やかな酸味とあわせて、チーズとの相性を考えるときの一つの手がかりになる。
発酵という共通言語
麹菌が米を変容させ、乳酸菌やカビなどの微生物がミルクを変容させる。日本酒とチーズは、どちらも微生物の働きによって原料の姿を変えた産物である。たどる経路は違っても、生じる旨味や複雑さ、深みには重なる部分がある。
チーズもまた、発酵という文脈における変容の実例として、日本酒と同じ語りの中に置くことができる。ペアリングを組み立てることは、構造として響き合うものを引き合わせる作業である。チーズと日本酒の組み合わせは、発酵という共通言語を持つ二つの産物が、静かに交わる場所を示している。
This article is intended solely to explore the fermentation science and brewing philosophy connecting sake and cheese as culturally paired foods, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับวิทยาศาสตร์การหมักและปรัชญาการผลิตที่เชื่อมโยงสาเกกับชีสในฐานะอาหารที่จับคู่กันทางวัฒนธรรม เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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