
2026年、発酵は「トレンド」を卒業した──世界の厨房で静かに進む構造転換
毎年この時期、世界中のフードメディアは「今年のトレンド」を発表する。プラントベース、低糖質、ノンアルコール。だが2026年、ひとつの技術だけが「トレンド」の枠を静かに超えた。発酵である。
ミシュランガイドの2026年版トレンドレポートで、インスペクターたちは「保存と発酵のフレーバーが、ダイニングの形を変えている」と明言した。ジェームズ・ビアード財団も同年の重要トレンドに発酵を挙げる。注目すべきは、いずれの報告も発酵を「新しい手法」ではなく「厨房の基礎体力(コア・キッチン・コンピテンシー)」として位置づけている点だ。トレンドは流行れば廃れる。だがコンピテンシーは、一度獲得されれば厨房のDNAに組み込まれる。
30%という数字、そして「置き換える」発酵
米国の料理教育機関、カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ(CIA)の「Menus of Change 2025 Annual Report」は、調査対象のシェフの約30%が麹を使った発酵技術に積極的に取り組んでいると報告した。これは一部の前衛シェフによる実験ではなく、プロの厨房における標準装備に近づいていることを示している。
本質的な転換は、発酵が「加える」技術から「置き換える」技術へと役割を変えていることだ。塩の代わりに味噌を使い、酢の代わりに自家製ビネガーを使い、バターの代わりに麹で熟成させた穀物ペーストを用いる。発酵は調味料のひとつの選択肢ではなく、味の設計思想そのものを書き換え始めている。
大陸を越える麹
メキシコシティの「Balcón del Zócalo」では、シェフのペペ・サリナス氏が地元産の米「アロス・モレロス」で麹を育てている。米国アリゾナ州ツーソンの「BATA」では、シェフのタイラー・フェントン氏が麹をスピリッツに浸漬し、ソースの増粘剤として用い、甘酒だけで発酵させたパンを焼く。ひとつの菌が、ドリンク、主菜、パンという三つの領域を横断している。
麹はもはや「和食の素材」ではない。あらゆる食文化に入り込み、土地の食材と対話しながら新しい味覚を生む「オペレーティング・システム」として機能し始めている。
引き算としての発酵
発酵がコンピテンシーとして定着した背景には、サステナビリティへの要請がある。果物の切れ端からビネガーを仕込み、季節ごとに余った唐辛子を発酵ペーストに変える。発酵は「華やかな足し算」ではなく「賢い引き算」の技術として、フードロス削減と直結する。
ソウルでは伝統的な醤(ジャン)の発酵甕に高度なモニタリングシステムを組み合わせるレストランが登場し、北欧では地元のベリーや根菜を東アジアの発酵手法で加工するシェフが増えている。伝統と科学、東洋と西洋の境界線の上に、新しいガストロノミーの言語が生まれつつある。
バンコクの厨房にとっての意味
タイは元来、発酵文化の宝庫である。ナンプラー、カピ、プラーラー。日常の調味料がすでに発酵の産物だ。しかしグローバルな「発酵コンピテンシー」の文脈で見ると、タイの食文化には、まだ活用されていない可能性が眠っている。たとえば、タイの伝統的な発酵調味料と日本の麹技術を掛け合わせた調味設計が考えられる。また、バンコクの高温多湿を「敵」ではなく「発酵の加速装置」として再解釈する発想もあり得る。
麹菌は、少なくとも1,300年前から東アジアの食文化を支えてきた。その古い技術が、2026年に「新しいスタンダード」として世界の厨房に再インストールされている。トレンドは消える。だがコンピテンシーは残る。発酵が「流行」の棚を離れ「基礎」の棚に移動した2026年は、食の歴史において静かだが決定的な分岐点として記憶されるかもしれない。
This article is intended solely to explore the structural shift of fermentation from a culinary trend to a core kitchen competency in 2026, as reflected in Michelin’s 2026 trend report, the James Beard Foundation, the CIA Menus of Change 2025 report, and cross-cultural cases in Mexico, the United States, Korea, and Northern Europe, and is not intended to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับการเปลี่ยนแปลงเชิงโครงสร้างของการหมักจาก “เทรนด์” สู่ “ความสามารถพื้นฐานของครัว” ในปี 2026 ที่สะท้อนผ่านรายงานเทรนด์ Michelin 2026, James Beard Foundation, CIA Menus of Change 2025 และกรณีตัวอย่างจากเม็กซิโก สหรัฐอเมริกา เกาหลี และยุโรปเหนือ เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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