和酒の地図 — 五つの段を一望する

和酒の地図 — 五つの段を一望する
連載「和酒の階段(The Sake Staircase)」第0話

バンコクで日本の酒に向き合うとき、多くの人が同じ場所でつまずく。日本酒、焼酎、梅酒、ジン。ラベルの文字は読めず、呼び名も種類も入り組み、どれがどう違うのかも見えてこない。結局、すべては「よく分からない、高い日本のお酒」という一言にまとめられてしまう。

けれども、和酒は一つの塊ではない。それは、いくつもの異なる原理が積み重なった、五つの段からなる階段である。米を醸す段があり、蒸留して香りを抜き出す段があり、果実と時間を閉じこめる段がある。段が変われば、造りの考え方そのものが変わる。

2026年8月28日から30日まで、クイーン・シリキット国際会議場(QSNCC)で乾杯タイランド2026が開かれる。40の蔵が一堂に会する三日間である。だが、地図を持たずにこの会場に立てば、40のブースはただの迷路になる。どこから歩けばいいのか、何を手がかりに見て回ればいいのかが分からないまま、時間だけが過ぎていく。

この連載は、その会場を「迷路」としてではなく、地図を持って歩くために書かれる。和酒を五つの段に分け、一段ずつ、誰が・どこで・どんな考え方で造っているのかを案内していく。一冊の入門書というより、一枚の地図を手渡す試みである。

最初に、五つの段を一望しておきたい。

第1段は、日本酒。米を磨き、米で醸す醸造酒である。どこまで磨くか、どの水で仕込むか。その選択が、酒の輪郭を決める。

第2段は、焼酎。麹を使って発酵させたもろみを蒸留し、原料の香りと味わいを取り出す蒸留酒である。芋、麦、米。原料が変われば、立ち上る香りも変わる。

第3段は、梅酒。果実と、果実が漬け込まれた時間を、糖とアルコールのなかに閉じこめる保存の技術である。日本で古くから親しまれてきた果実酒の世界が、ここにある。

第4段は、リキュール。食前酒(アペリティフ)としても楽しめる、配合の酒である。柚子、抹茶、塩、カシス。素材を選び、組み合わせる配合の自由が、この段の核心にある。

第5段は、クラフトジンとクラフトビール。日本酒や焼酎で培った発酵や蒸留の知見を、酒蔵が新しい酒の形へと広げる段である。

五つの段は、初心者向けから上級者向けへと並んでいるのではない。それぞれが独立した原理を持つ、五つの異なる風景である。一段ずつ登れば、会場の40ブースは整理され、自分がどの段からのぞいてみたいのかが、自然と見えてくる。

なお、各蔵がどの段にあたる酒を出すのかは、準備の進行とともに確定していく。本連載で紹介する銘柄は、当日までに変更となる可能性がある。確かめられた事実だけを、一段ずつ書き進めたい。

この地図は、三つの場所につながっている。蔵元の物語をゆっくりと辿る場として、テイスティングバーのSalon du Japonisantがある。品揃えと知識にプロの視点で触れられる場として、伝統的な酒販店のNadaya Saketenがある。そして麹と発酵を主題に据えた場として、KOUJI ALCHEMIST by salon du japonisantが、焼酎や麹を使ったリキュールを別の文脈から捉え直している。同じ和酒の地図を、三つの異なる角度から読み解ける。

私たちは長いあいだ、日本の酒を一本ずつ丁寧にバンコクへ運んできた。けれど一本のボトルの背後には、必ず土地と人と時間がある。そのボトルと出会う前に、まず地図を手渡したい。これは売るための案内ではなく、和酒という大きな世界の見晴らしを、もう少しだけよくするための地図である。

開幕まで、あと61日。次回は第1段、日本酒から階段を登りはじめる。


This article is the introduction to a series exploring the brewing and distilling heritage of the Japanese sake, shochu and Japanese craft producers gathered at KANPAI Thailand 2026, and the three venues of Bacchus Global. It is intended solely to share cultural and educational context, and does not aim to promote or encourage the consumption or purchase of alcohol. Participating producers and products may change before the event. For those aged 20 and over; please drink responsibly.

บทความนี้เป็นบทเปิดของซีรีส์ที่นำเสนอเรื่องราวเกี่ยวกับปรัชญาการผลิตและมรดกทางวัฒนธรรมของผู้ผลิตสาเก โชจู และสุราคราฟต์ญี่ปุ่นที่มาร่วมงาน KANPAI Thailand 2026 ตลอดจนพื้นที่ทั้งสามแห่งของ Bacchus Global จัดทำขึ้นเพื่อแบ่งปันบริบททางวัฒนธรรมและความรู้เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาการบริโภคหรือการซื้อเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ รายชื่อผู้ผลิตและผลิตภัณฑ์ที่ร่วมงานอาจมีการเปลี่ยนแปลงก่อนวันงาน สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างมีความรับผิดชอบ


“The Liquid Narrative” / “A Quiet Evolution in Bangkok” / “The Flourishing Sake Scene in Bangkok” / “Shochu at Its Base, Liqueur by Category” / “A Sake Named by a Poet—Tamba’s “Kotsuzumi,” the First Step into Japanese Sake”

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