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造る季節を広げ、使う部分を絞る――羽根屋「煌火」の四季醸造と中汲み

造る季節を広げ、使う部分を絞る――羽根屋「煌火」の四季醸造と中汲み
四層の紙が一本へ絞られる構成で羽根屋「煌火」を表した、KANPAI Makers’ Choices No.02のインスタレーション

造り手の選択|KANPAI Makers’ Choices No.02

日本酒は冬に造るもの。そんなイメージを持つ人は多いかもしれない。実際、日本では寒い時期に集中的に仕込む「寒造り」が長く行われてきた。

一方、富山県富山市の富美菊酒造は、時期を冬だけに限らず、年間を通じて酒を醸す「四季醸造」を行っている。その体制のもとで造られる「羽根屋 純吟 煌火(きらび)生原酒」は、蔵元が看板商品と位置づける一本である。

一年を通じて醸す。けれど、羽根屋ブランドに用いるのは搾りの中間部分だけである。造る時間の幅を広げながら、瓶に詰める部分は絞る。「煌火」から見えてくるのは、この対照的な二つの選択である。

なぜ、日本酒は冬に造られてきたのか

日本酒造組合中央会の解説によれば、日本酒を冬に集中的に醸す方式は、江戸時代中期までに定着した。酒類総合研究所の用語集でも、冬の酒造りは微生物による汚染を防ぐのに有効な方法と説明されている。

しかし、現在は空調や冷却設備によって、蔵の中に必要な環境を整えられる。四季醸造とは、冬の寒さだけに頼らず、年間を通じて仕込みを行える体制のことである。

ここで注意したいのは、四季醸造が「四季ごとに違う酒を造る」という意味ではないことである。また、一年中まったく同じ条件で醸すことや、大量生産を意味する言葉でもない。富美菊酒造の公式ブランドストーリーから確認できるのは、年間を通じて酒造りを行う体制を整え、その体制のもとで「煌火」や「翼」を新しい定番として提案してきたという点までである。仕込みの頻度や、ロットごとの調整内容は公表されていない。

「生原酒」を看板商品に据える

公式商品ページに記された正式名は「羽根屋 純吟 煌火 生原酒」である。

国税局の用語解説によれば、「生酒」とは、搾ったあとに火入れと呼ばれる加熱処理を一度も行わない清酒を指す。「原酒」とは、原則として、搾ったあとに水を加えて成分を調整しない清酒のことである。いずれも日本の製法表示に関する言葉であり、タイにおける輸入時の分類、税務上の分類、表示上の分類とは分けて考える必要がある。

「生」は、加熱処理を行っていないことを示す。「原酒」は、搾ったあとの加水調整を原則として行っていないことを示す。その二つを商品名に掲げる「煌火」を看板商品として支えるのが、酒を造る時期を冬だけに限らない体制である。

ただし、四季醸造だからといって、「いつでも同じ酒が手に入る」とまでは言えない。四季醸造は、あくまで造り手側の製造体制を表す言葉である。販売時期や流通量を保証するものではない。

搾りでは、真ん中だけを選ぶ

もう一つの選択が「中汲み」である。

発酵を終えた醪(もろみ)を搾ると、酒の状態は搾り始め、中間、終盤で少しずつ変わる。「中汲み」または「中取り」とは、その中間部分を取る方法である。富美菊酒造は、羽根屋ブランドにこの中間部分だけを用いると説明している。

中汲みは、単純に「一番よい部分」という意味ではない。搾りのどの部分を商品に使うかという、造り手の選択である。しかも、これは「煌火」だけの特別仕様ではなく、羽根屋ブランド全体の方針として示されている。

年間を通じて酒を造りながら、羽根屋ブランドには搾りの中間部分だけを用いる。造る時期は広げ、羽根屋ブランドに用いる部分は絞る。この二つの判断に目を向けると、「煌火」の造りは単なる生産時期の話にとどまらない。

富山の水と五百万石

「煌火」の原料米は、富山県産の五百万石である。五百万石は、日本酒造りに適するよう育成された酒米の一種である。富美菊酒造は、仕込み水にも立山連峰を源とする常願寺川水系の天然水を用いると説明している。

富美菊酒造は、富山の水と富山県産の酒米を使う取り組みを、土地の特徴を酒造りに反映させる試みとして説明している。「煌火」では、どこで醸すかだけでなく、どこの米と水を使うかも富山につながっている。

公式商品ページに記された特定名称は純米吟醸で、精米歩合は60%である。精米歩合60%とは、玄米を磨いたあとに、元の重さの60%が残っていることを示す。数値だけなら一行で終わる。しかし、その米をいつ仕込み、搾ったあとのどの部分を使うかまで見ると、商品表示の内側にある判断が見えてくる。

「煌火」を、造りの選択から読む

「煌火」という名について、蔵元は夜空を彩る花火の煌めきを重ねて説明している。ただ、本稿で確かめたかったのは名称の印象ではなく、看板商品を支える製造上の選択である。

前回の七賢「白心」は、醸造後に一年待つ時間を商品設計に組み込んだ。羽根屋「煌火」では、酒を造る期間を通年に広げながら、搾りでは使う範囲を中間部分に絞っている。

白心が「醸したあと、どれだけ待つか」を設計した酒なら、煌火は「いつ醸すか、搾ったあとのどこを使うか」を設計した酒である。造り手の選択は、何かを足すことだけではない。時間を広げ、使う部分を絞る判断にも表れる。


This article presents the production choices and cultural background behind HANEYA KIRABI. It is not intended to advertise alcoholic beverages or encourage their purchase or consumption. This article is intended for readers aged 20 and over.

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