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なぜ、あの器はあの形をしているのか

机の上に、三つの器を並べてみる。脚の長いワイングラス。白磁の底に、青い二重丸が描かれた小さな器。そして、白いプラスチックのカップ。三つ目は意外に思うかもしれない。これは、日本の清酒の公式な審査で、実際に使われているものだ。同じ酒を前にして、三つの器はそれぞれ違う問いに答えている。

器の中で、何が起きているのか
2015年、日本の研究チームが、器の中でアルコールの蒸気がどこにあるかを写真に撮ることに成功した。荒川貴博らが英国王立化学会の学術誌『The Analyst』に発表した研究である。
仕組みは意外に単純だ。アルコールの蒸気が触れると光る特殊な網を用意して、その光を高感度のカメラで撮る。光が強い場所ほど、蒸気が濃い。
チームはワイングラス、カクテルグラス、寸胴のストレートグラスの三種類で比べた。すると、ワイングラスで面白い模様が出た。濃いアルコールの蒸気は、グラスの縁のあたりに輪のように並び、真ん中は薄かった。
つまり、この条件では、蒸気の濃度分布が形によって異なった。
このときワインは13℃だった。これは実験の条件である。論文が書いているのは「この条件でこう見えた」というところまでで、それ以上のことは書かれていない。
ワイングラスを分解すると、三つの部分になる。ふくらんだ「ボウル」は、ワインの表面の広さと、その上にできる空間の大きさを決める。いちばん上の縁である「リム」は、その空間の出口の広さを決める。脚の「ステム」は、手のひらと中身のあいだに距離を作る。三つとも、香りを作り出す部品ではない。香りはもともと酒の中にある。三つの部分が決めているのは、それをどこに置くかだけだ。
器の形は、人の鼻を騙せるか
器の中で分布が変わる。では、人の鼻はその差を感じ取れるのだろうか。
これを調べた実験が、2002年に行われている。方法が面白い。参加者には目隠しをさせた。グラスを見ることも、手で触ることもできない。「高そうなグラスだから良いはずだ」という、見た目や手触りによる思い込みの影響を抑えるためである。参加者はワインの専門家ではない、ふつうの人たちだった。
使われたのは四種類の器。そのうち二つは、それぞれ「シャルドネ用」「ボルドー用」として作られた専用のグラスだった。ワインはカリフォルニア産のカベルネ・ソーヴィニヨン。ボルドー用のグラスは、まさにこのタイプのワインのために設計されている。
結論はこうまとめられている。器の影響は「限られてはいるが、たしかにある」。ただし、統計的にはっきりした差として出たものは、たったひとつだった。そしてそれは、予想と逆を向いていた。そのワインのために設計されたボルドー用のグラスが、四つの中でいちばん「香りが弱い」と評価されたのである。
翌2003年の実験は、181人という大人数で行われた。高さをそろえ、口の広さも同程度にして、形だけを変えた器を用意している。大きいグラスだったから、という別の理由を消すためだ。結果は、やはり形が評価を変えるというもの。そしてこの研究は、もう一歩踏み込んだ。その差は、グラスの見た目の印象では説明できなかった。きれいなグラスだから良く感じた、という話ではない、ということである。
検証はその後も続いている。2008年には九種類の形で、2023年にはボルドー型とブルゴーニュ型の二種類、三つの大きさで。ここまでを並べると、二つのことが見えてくる。ひとつ。「形は関係なかった」と結論した研究は見当たらない。もうひとつ。どちらの方向に効くのかが、そろっていない。
そして2012年、両方を同時に測った研究がある。一種類の白ワインを、五種類の器に入れた。理科の実験で使う三角フラスコまで比較対象に含めている。測定するまでに置いておく時間も、0分、5分、10分と変えた。器の上の空気の成分と、人の香りの評価を同時に測ったのである。
結果は三段階だった。器の上の空気の成分は、形によっても時間によってもはっきりと変わった。人の香りの評価も、形と時間によってはっきりと変わった。そしてこの研究で扱った形状パラメータ――容量、高さ、口の広さ、いちばん太い部分の幅、その比率、中身の量――と、香りの官能評価の強度との相関は確認されなかった。
日本の器は、まったく別のことを見ていた
机の上の、二つ目の器に移る。利き猪口。白い磁器の内側の底に、コバルトブルーの二重丸が描かれている。蛇の目と呼ばれる文様だ。
この器が読み取ろうとしているのは、香りではない。色である。青い部分の上では、酒がどれくらい澄んでいるかを見る。白い部分の上では、酒の色そのものを見る。ワイングラスが「空間の形」を設計しているのに対して、こちらは「背景の色」を設計している。同じ「器」という言葉でくくられていても、解こうとしている問題がまるで違う。
そして、三つ目の器である。全国新酒鑑評会という審査がある。独立行政法人 酒類総合研究所が行う、日本の清酒の公式な審査だ。その進め方を定めた文書には、手順が細かく書かれている。そのなかの一行が、これである。
「官能審査の容器は予審、決審とも酒類総合研究所オリジナルプラスチックカップを使用します。」
蛇の目の利き猪口ではない。「日本酒の審査といえば蛇の目の猪口」というイメージは、広く共有されている。だが公式の文書が定めているのは、専用のプラスチックカップの方である。この文書は、使うものを決めているだけで、なぜそれなのかは書いていない。書かれているのは、予審でも決審でも同じひとつの容器を使う、という一点だけである。
三つの器、三つの目的
最初に並べた三つを、もう一度見てみる。ワイングラスは、蒸気をどこに置くかを設計している。蛇の目の利き猪口は、色と澄み具合をどう見るかを設計している。鑑評会のプラスチックカップは、予審・決審とも同じ研究所オリジナルカップを使用するという運用までが、公式文書で確認できる。
三つのあいだに、優劣はない。それぞれが、違う質問に答えているだけである。そして三つを並べてみると、「どの器がいちばん優れているか」という質問が、そもそも成り立っていないことが分かる。優れているかどうかは、何を知りたいのかが決まって、はじめて決まるからだ。
分かっていないことも、二つ残っている。ひとつは2002年の結果だ。そのワインのために設計された器が、いちばん弱く評価された。なぜそうなったのかは、その後も説明されていない。もうひとつは2012年の結果だ。形はワインの側にも人の側にも効いていたのに、器のどの寸法がその効果を担っているのかは、特定できなかった。形は効いている。それは何度も確かめられている。だが、形の何が効いているのかは、まだ分かっていない。
本記事は、どの器を選ぶべきかを述べない。確認できるのは、それぞれの器が何を観察し、何を統一しようとしているか、というところまでである。
This article is intended solely to explore the physical and cultural background of vessels used for wine and sake, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol.
บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับภูมิหลังทางกายภาพและวัฒนธรรมของภาชนะที่ใช้กับไวน์และสาเก เพื่อเป็นข้อมูลความรู้เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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