FRENCH LIQUEUR & SPIRITS
タイ東北の記憶がバンコクへ戻る——サートー復権が映す発酵文化の現在

農村の発酵文化を、微生物、温度管理、記録から読み直す。
2026年3月、国際的な飲食メディア「The World’s 50 Best」は、タイの米発酵酒サートー(สาโท)を「いま注目される飲み物」と紹介した。記事が取り上げたのは、一軒の流行店だけではない。バンコクの複数のレストランが、それぞれの考えでサートーを扱い始めたという変化である。
ただし、サートーは都市で生まれた新商品ではない。タイ東北部イサーンの農村で、祝い事や共同作業の場を支えてきた酒である。新しいのはサートーそのものではなく、それを説明し、品質を管理し、都市のメニューに載せる方法なのだ。
米を糖に変え、糖を酒に変える
サートーの主な原料は、蒸したもち米とルークパン(ลูกแป้ง)と呼ばれる発酵の種である。米のデンプンは、そのままでは酵母が利用しにくい。そこで、ルークパンに含まれるカビなどが酵素をつくり、デンプンを糖へ分解する。次に酵母が糖をアルコールへ変える。
近年の研究でも、各地のルークパンから複数のカビと酵母が見つかっている。つまり、ルークパンは一種類の菌ではなく、小さな微生物の集まりである。その構成は地域や作り手によって異なるため、「サートーは必ずこの香り、この度数」と一概に決めることはできない。The World’s 50 Bestが紹介した例ではアルコール分はおよそ5%から7%だが、これはカテゴリー全体の決まりではない。
再評価の一例を支える温度管理と記録
現代のクラフト化を象徴する生産者の一社が、ノンタブリーのDevanomである。Nattachai “Ob” UngsriwongとTeerapat “Art” Ungsriwongの兄弟が2014年に創業し、ビールや蜂蜜酒の醸造を経て、2022年にサートーの醸造を始めた。
酒類メディア88 Bambooが2026年に行った取材によれば、同社の生産量は月に約5,000〜6,000リットルで、新しいタンクの導入により生産能力を約3倍にする計画だという。これは一社への取材に基づく数字であり、市場全体の規模を示すものではない。それでも、少なくとも同社では、サートーが温度管理、発酵記録、設備投資の対象になっていることが分かる。
Time Out Bangkokは、主催者から提供された情報に基づき、同年9月に30以上のブランドが参加する「SATO SO GOOD」がバンコクで予定されていると報じている。ここで起きているのは、昔への単純な回帰ではない。家庭ごとに異なる発酵の個性と、再現性や衛生管理をどう両立させるか。その取り組みが都市の目に見える場所へ移ってきたのである。
日本酒と似ているが、同じではない
サートーと日本酒には、米のデンプンを微生物の力で糖に変え、その糖を酵母がアルコールへ変えるという共通点がある。しかし、使う菌、発酵の進め方、ろ過や加熱の考え方は異なる。日本酒の「並行複発酵」という言葉を、そのままサートーの説明に貼り付けるのは正確ではない。
この共通点に絞って比較すれば、タイの発酵文化を日本酒の単なる前置きとして扱わず、二つの文化を対等に説明できる。
バンコクの現場で、何を説明するか
飲食店がサートーを紹介するとき、先に確認したいのは「人気かどうか」ではない。まず確認したいのは、使用する米、産地、ルークパンの種類である。さらに、発酵温度、ろ過、加熱処理、アルコール分についても、生産者が何を公表しているかを確かめる。生産者による説明と店舗側で確認した内容は、分けて記録する。
この手順を踏めば、サートーを「珍しい地酒」という紹介だけで終わらせず、作り手ごとの差を説明できる。2026年に見られる再評価の動きが問いかけているのは、古いものを新しく見せる方法ではない。地域の記憶を、その根拠を損なわずに現代の言葉へ移せるか、ということである。
サートーをバンコクで紹介する動きが広がっている。その変化の本質は、農村の酒が都会の酒になったことではない。見えにくかった米、菌、人の仕事が、もう一度語られるようになったことにある。
This article is intended solely to explore the fermentation techniques, cultural heritage, and contemporary revival of Thai sato, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol.
บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับกระบวนการหมัก มรดกทางวัฒนธรรม และการกลับมาได้รับความสนใจของสาโทไทยในบริบทร่วมสมัยเท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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