
平和な時代に、酒を造る——平和酒造の「古鶴梅」が十年の熟成で書き換えた梅酒の語り口
戦後まもない1940年代、和歌山県海南市の小さな酒蔵は休業を命じられていた。米は配給制、酒は贅沢品。再開の見通しは立たなかった。
二代目当主・山本保正は東京へ向かい、国会に陳情した。「平和な時代に、酒造りをしたい」。その願いがそのまま社名となる。これが「平和酒造」の起点だ。
1928年創業、四代目の改革
平和酒造の本拠は和歌山県海南市溝ノ口。高野山水系の軟水と稲作地帯を背景に、1928年から山本家が酒造りを続けてきた。戦後の休業からの再開を経たあと、長らく地元向けの普通酒が中心だった。
転換点は2004年。四代目・山本典正が26歳で帰郷したとき、蔵の生産量の99.9%をパック酒が占めていた。京都大学経済学部を出たばかりの彼は、翌年から、限定流通の「八岐の梅酒」、続いて全国流通の「鶴梅」シリーズを立ち上げる。普通酒の蔵が、梅酒で全国の酒徒に名を知られる蔵へ。改革は一本の梅酒から始まった。
「梅酒」の言葉を組み替える
「古鶴梅」は、その鶴梅シリーズの最高峰として位置づけられる。「完熟」「すっぱい」「完熟にごり」という3つのスタンダードを経て辿り着く、最終章にあたる一本だ。
設計思想は明快だ。紀州・和歌山産の完熟南高梅で仕込んだ梅酒原酒を、十年の歳月をかけて長期熟成させる。さらに複数の木樽(ウイスキー樽、シェリー樽、バーボン樽を含む)で熟成させたうえでブレンドし、最後は加水せず原酒のまま瓶詰めする。
通常、梅酒は「甘い」「飲みやすい」という言葉で語られてきた。だが古鶴梅の香りは、熟した梅の濃縮感に始まり、ドライフルーツ、ヴァニラ、カラメル、オーク、ハーゼルナッツへと連なる。ウイスキーやシェリー酒の語彙で語れる香味構造を持つ。バーテンダーやソムリエが、自分の言葉で語れる梅酒に仕上がっている。
フランスの審査員が選んだ和製ディジェスティフ
外部評価も追いついた。古鶴梅は、フランスで開催されるKura Master梅酒コンクールで、2024年に金賞を受賞し、続く2025年にはプラチナ賞を受賞している。トップソムリエ、五つ星ホテルの関係者、ミシュラン星付き店のプロが、ペアリングを前提に審査する大会である。連続受賞かつランクの昇格という事実は、単年の評価よりも重い。
蔵元である平和酒造も、IWC(International Wine Challenge)のSAKE部門で2019年・2020年と「Sake Brewer of the Year」を連覇しており、海外のプロ市場での信頼の蓄積は厚い。
「和製の熟成ディジェスティフ」。食後の時間に寄り添う一本として、海外の評価軸によって輪郭が明確になりつつある。KOUJI ALCHEMIST by salon du japonisantのカウンターでも、古鶴梅は鶴梅シリーズの最終章として位置づけられる。ウイスキーや日本酒を入り口として来店した客が、最後に出会う梅酒。それがこの一本の役割だ。
戦後、国会への陳情から生まれた一つの社名から、十年の歳月を樽のなかで磨かれた一本の梅酒へ。平和酒造の物語は、まだ続いている。
This article is intended solely to explore the blending craftsmanship and cultural heritage of Heiwa Shuzo Co., Ltd. and the Ko-Tsuru-Ume brand, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับศิลปะการผสมผสานและมรดกทางวัฒนธรรมของ Heiwa Shuzo Co., Ltd. และแบรนด์ Ko-Tsuru-Ume เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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