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雪室のなかで琥珀に変わる、清酒の技──八海山「風媒花」が描く、米焼酎のもう一つの流儀

雪室のなかで琥珀に変わる、清酒の技──八海山「風媒花」が描く、米焼酎のもう一つの流儀

雪室のなかで琥珀に変わる、清酒の技──八海山「風媒花」が描く、米焼酎のもう一つの流儀

新潟県南魚沼市、霊峰・八海山の麓に、約1,000トンの天然雪を蓄えた半地下の貯蔵庫がある。八海醸造株式会社の「雪室(ゆきむろ)」である。電気を用いた人工的な冷却を一切行わず、通年4℃以下、無振動・暗闇のなかで、アメリカンホワイトオーク樽が静かに並んでいる。樽の中身は、ウイスキーでもバーボンでもない。日本酒蔵が、清酒造りの技術と副産物を生かして仕立てた、本格米焼酎である。商品名は八海山本格米焼酎 オーク樽貯蔵「風媒花(ふうばいか)」。40度・720mlのみの展開である。2016年の発売以来、限定生産のかたちで世に出されてきた一本である。

1922年創業の酒蔵が、なぜ蒸留酒へ歩を進めたのか

八海醸造は、1922年(大正11年)、初代・南雲浩一氏が現在の新潟県南魚沼市長森にあたる地に開いた小さな酒蔵から始まっている。霊峰・八海山に降った雪が長い時間をかけて伏流水となった「雷電様の清水」を仕込み水とし、淡麗辛口の清酒「八海山」を世に問うてきた酒蔵である。1953年には2代目・南雲和雄氏が25歳で家業を継ぎ、戦後の苦境から蔵を立て直した。3代目・南雲二郎氏の代で蔵は近代化を遂げ、2025年4月、4代目・南雲真仁氏へと指揮が引き継がれている。1世紀を超える清酒の蔵が、2005年に蒸溜所「深沢原蒸溜所」を新設し、2008年に焼酎事業を、そして2016年にこの「風媒花」を世に送り出した。蒸留酒は、日本酒蔵にとって遠い領域でありながら、米と水に向き合ってきた家の延長線上にも、たしかに連なっている。

日本酒蔵だからこそ可能な、米焼酎の流儀

九州を中心とする伝統的な米焼酎が、白麹・黒麹を主軸に2回仕込みで組まれてきたのに対し、風媒花の設計はまったく別の場所から始まっている。原料は、米・米こうじ・清酒粕。麹は日本酒醸造に使われる黄麹、酵母も清酒酵母である。仕込みは清酒と同じ三段仕込み(初添え・仲添え・留添え)。発酵の途中で、清酒「八海山」の製造過程で生まれる新鮮な酒粕を加えることで、メロンや青リンゴ、白い花を思わせる繊細な吟醸香が立ち上がる。これを減圧蒸留によって40〜50℃の低温で丁寧に蒸留し、雑味を抑えた透明なベースを得る。「焼酎蔵が洋酒製法を取り入れた米焼酎」とは異なり、「日本酒蔵が、清酒造りの技と副産物から、樽熟成スピリッツを設計した」という、業界でほかに見つけにくい文脈がここにある。

雪のなかで琥珀に変わる、ゼロ・エナジー熟成

蒸留した原酒は、アメリカンホワイトオークの樽に詰められ、八海山雪室の半地下貯蔵庫へと運ばれる。1,000トンの雪が断熱材として働き、貯蔵庫内は通年4℃以下、高湿度で、振動のない暗闇。電気を用いず、自然の冷源だけで保たれる空間である。樽材由来のバニラ、カラメル、ドライフルーツの香りと、原酒由来の吟醸香や米の旨味が、長い時間をかけて静かに溶け合う。仕上げの色調は、意図的に淡い琥珀色に留められている。樽香を取り込みすぎず、酒税法上の「焼酎」分類を維持するための、繊細な調律でもある。派手さよりも整いを選んだ姿勢が、ボトルの色そのものに静かに表れている。

風媒花という名前、静かな伝承の意志

「風媒花」とは、鳥や蝶の助けを借りず、風そのものに身を任せて命をつなぐ花のことである。蔵はこの植物の在り方に、「日本古来の酒造りの技を百年も千年も伝承していきたい」という静かな意志を重ねている。ラベルは、篆刻芸術家・古川悟氏の作品「花ばな」。対になった「華」の字が風になびく姿を彫った、和紙の意匠である。派手な香り立ちを誇るのではなく、自然の摂理に沿って静かに次代へ手渡されていく、そんな姿が、ボトルの佇まいにもそのまま表れている。

2025年、TWSCが残した三つの評価

2025年5月、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)の焼酎・泡盛部門で、風媒花は「最高金賞」「米26%以上ベストカテゴリー賞」「デザイン賞」の三つを揃って受賞した。298名の専門家による190アイテムのブラインド審査のなかで、最高金賞が与えられたのは出品酒のうち上位1割にあたる銘柄に限られている。それ以前の歩みも、2023年のIWSCで94点の高評価、2024年のTWSC銅賞と、三年間で評価を静かに高めてきた軌跡が見える。国際審査員のテイスティングノートには、「ドライフルーツ、松、きのこのような森のニュアンス、白胡椒のように長くスパイシーな余韻」と記された。

バンコクのバーカウンターで、ロックの一杯や繊細なハイボールが供されるとき、グラスの向こう側には、八海山の伏流水と、雪室の静寂と、清酒造りの技を蒸留酒へ運んだ、四代にわたる蔵元の姿勢が、同じ重みで息づいている。


This article is intended solely to explore the distillation techniques and cultural heritage of Hakkaisan Brewery and the Fubaika brand, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับเทคนิคการกลั่นและมรดกทางวัฒนธรรมของ Hakkaisan Brewery และแบรนด์ Fubaika เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ

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