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縮むワインの世界で、価値はどこへ向かうのか
OIVの2025年速報値が映す構造転換

世界のワイン生産量は、3年連続で歴史的な低水準にある。国際ブドウ・ワイン機構(OIV=各国の生産・消費データをまとめる国際機関)が公表した2025年の速報値によれば、その量は今世紀で最も少ない部類に入った。通常なら「ワインが足りなくなる」と身構える数字だ。だがOIVは、不足の心配はないと見ている。理由はシンプルで、需要そのものが生産量の落ち込み以上に縮んでいるからだ。
生産も消費も、年単位で減り続けている
世界のワイン消費量は2025年に前年比2.7%減少し、これで4年連続の減少となった。消費のピークは2007年で、そこからゆるやかに、そして2021年以降は加速しながら落ちている。生産国の顔ぶれは大きく変わらない。イタリア、フランス、スペインの3か国だけで世界の生産のほぼ半分を占め、EU全体ではおよそ6割を占める。
縮み方には濃淡がある。2025年の世界の消費減少分のうち、実に3分の1はイタリア1国の減少分が占めている。別の意味で象徴的なのは中国だろう。かつて「ワイン市場の希望の星」と呼ばれた国の消費は、2020年からの5年で半分以下に落ち込んだ。背景にあるのは、世代交代やライフスタイルの変化、経済環境の厳しさといった、後戻りしにくい構造的な要因だ。
ブドウ畑が、静かに姿を消している
もうひとつ見落とせないのが、ブドウ畑そのものの縮小だ。世界のブドウ畑の面積は2002年をピークに、ほぼ一貫して減り続けている。霜や干ばつ、長雨といった気候不順や、病害による打撃も大きい。さらにフランスやスペインでは、政府の支援のもとで「抜根」が進む。つまり、採算の合わない畑のブドウの木を引き抜く動きだ。生産を絞らなければ、供給過剰と値崩れが避けられない。そうした判断が、畑の地図を書き換えている。
数字だけ見れば、これは縮小と後退の物語に見える。だが、もう一段だけ視点を引くと、別の絵が浮かび上がる。
量が減っても、価値は消えない
OIVが「不足はない」と言い切れるのは、各地に積み上がった在庫が、生産の落ち込みを補うからだ。つまり世界のワインは、足りないのではなく、量の面では縮小しながら「適正化」されつつある。
そして縮むなかで、市場はむしろ高付加価値の側へ傾いていく。輸出されるワインを数量で見ればスパークリングは1割ほどだが、輸出額に占める割合では4分の1近くにのぼる。世界のワインの輸出額は、コーヒーやチョコレート、さらには高級腕時計と比較されるほどの規模にある。量だけで見れば飲料だが、価値で見れば、ワインはすでに嗜好品・文化的商品の側に立っている。
伸びている市場も、わずかながら存在する。たとえば日本は、消費が増えた数少ない国のひとつだ(2025年は前年比で6.8%増えた)。世界が量を減らすなかで、「何を、なぜ選ぶか」を問い直す動きが、静かに広がりつつある。
「小さくても光る」が当たり前になる時代へ
この構造転換が示すのは、ワイン市場の重心が、「量で消費されるもの」から「理由を持って選ばれる一本」へと移りつつある、ということだ。造り手は畑を絞り込み、飲み手は本数を減らす。残るのは、物語を持ち、土地の個性を伝えられる一本である。
バンコクで輸入とセレクトに携わる立場から見ても、仕事の軸は「数を動かす」ことから「選び、伝える」ことへ移っている。世界のブドウ畑が縮むいまだからこそ、一本の背景にある造り手の哲学や土地の個性を、丁寧に手渡すことの価値が増している。縮小は、必ずしも衰退ではない。それは、ワインがもう一度「特別な存在」に戻っていく過程なのかもしれない。
This image accompanies an article exploring global wine market trends and the cultural context of wine. It does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / ภาพนี้ประกอบบทความที่นำเสนอแนวโน้มตลาดไวน์ของโลกและบริบททางวัฒนธรรมของไวน์ มิได้มีเจตนาส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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