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「カーボンニュートラル」では足りなくなった
ワイン産地と、再生型農業の思想

2026年に入り、欧米の先進的なワイナリーが手がけるワインのラベルに新しい言葉が現れはじめている。「Organic(有機)」「Biodynamic(ビオディナミ)」という既存の認証表示と並んで、「Regeneratively Grown(再生型栽培)」という表記だ。なぜこの言葉が生まれたのか。一言で言えば、「環境への負担を減らすだけでは、もう間に合わない」という危機感からだ。
「カーボンニュートラル」とは、CO₂の排出量と吸収量を同じにして、差し引きゼロにする考え方だ。家計にたとえると「収入と支出をトントンにする」のと同じ感覚だ。ただ、問題はすでに大気中に過剰なCO₂が積み上がっている点で、収支をゼロにするだけでは蓄積した分は減らない。そこで出てきたのが、「カーボンネガティブ」という考え方だ。排出量より多くのCO₂を土壌に固定し、大気中のCO₂を能動的に減らす。ワイナリーが気候変動の「被害者」から「解決の担い手」へと変わる、発想の転換だ。
2024年に学術誌『Nature Reviews Earth & Environment』で発表された研究は、業界に衝撃を与えた。このまま気温上昇が続けば、現在のワイン産地の最大70%でブドウ栽培が困難になるという予測だ。フランスのボルドー、イタリアのトスカーナ、米国カリフォルニア州のナパバレーといった有名産地でも、収穫時期が年々早まり、ブドウの糖度が上がりすぎるという変化がすでに報告されている。
「負荷を減らす」から「土を生き返らせる」へ
ここで注目されているのが、「リジェネラティブ(再生型)農業」だ。化学合成農薬や化学肥料に頼らない「有機栽培」や、月のリズムに合わせて農作業を行う「ビオディナミ」といった既存の取り組みをさらに包み込む、より広い概念だ。中心にあるのはシンプルな問いだ。「土は生きているか?」
これまでの農業では、化学肥料や農薬の多用や、土を繰り返し耕すことによって、土の中の有機物が失われてきた。再生型農業は逆のアプローチをとる。ブドウの株間にクローバーやライ麦を育て、その根で土を守り、なるべく土を掘り返さない「不耕起」によって微生物が増えやすい環境をつくり、堆肥で土に栄養を戻す。こうした取り組みを数年続けた生産者からは、「コンクリートのように固かった土が、ふかふかと柔らかくなり、ミミズが戻ってきた」という報告もある。
2026年2月、英国の業界誌『The Drinks Business』は、再生型農業をめぐって業界内に対立が生じていると報じた。「正式な認証制度を作るべきだ」という声と、「土の状態は産地ごとに全く異なるため、一律の基準は機能しない」という懸念がぶつかり合っている。「認証取得が目的化して、肝心の土の回復がおろそかになる」という指摘もある。ただ、この論争が起きていること自体が、この動きが無視できない規模まで広がった証でもある。
麹と土壌に共通する哲学:微生物に場を与える
農業技術の話のように見えて、発酵文化に関わる人にはなじみのある思想が潜んでいる。
土の中には、目に見えない微生物が無数に生きている。バクテリアや菌類がネットワークを作り、養分を循環させ、炭素を固定する。再生型農業が目指すのは、人間がこうした営みを「管理」するのではなく、微生物が自ら働けるような環境を整えることだ。
この考え方は、麹(こうじ)に近い。麹菌は人間が「作る」ものではなく、米や大豆に宿って自然に働く微生物だ。日本酒、焼酎、味噌、醤油はすべて、麹の力を借りて生まれる。「微生物が動きやすい環境をつくり、あとは任せる」という哲学は、発酵・醸造の世界と再生型農業に、深いところで共通しているものだ。
バンコクのプレミアムワイン市場に目を向けても、オーガニックやナチュラルワインへの関心は年々高まっている。再生型ワインはその延長線上に位置するが、その意味は「無添加」といった消費者側の印象にとどまらない。ここで語られるのは、生産者が土、生物多様性、長期的な環境への責任にどう向き合うかという、生産哲学である。
ラベルに「Regeneratively Grown」という表記が増えていくとき、そこには単なる認証表示の追加ではなく、土地との関わり方をめぐる問い直しがある。持続するだけでなく、取り戻す。その発想の違いが、ワインの背景にある価値観を静かに動かしはじめている。
This article is intended solely to explore the sustainable farming philosophies and cultural heritage of the contemporary wine world, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับปรัชญาการเกษตรแบบยั่งยืนและมรดกทางวัฒนธรรมของโลกไวน์ร่วมสมัยเท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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