搾るはずのない段階で、搾った——『現外』というヴィンテージ日本酒の30年

搾るはずのない段階で、搾った——『現外』というヴィンテージ日本酒の30年

1995年1月17日の朝、阪神・淡路大震災が神戸を襲った。灘五郷の一角で江戸時代から酒を醸してきた沢の鶴の蔵も全壊した。その瓦礫のなかに、倒壊を免れた一つのタンクが残っていた。SAKE HUNDREDの『現外(げんがい)』は、このタンクから始まった日本酒である。

搾るはずのない段階で

日本酒造りには、搾らない工程がある。酒母(しゅぼ)と呼ばれる、発酵の土台をつくるための工程だ。蒸した米と麹と水から発酵の力を育てるこの工程は、あくまで仕込みの出発点であり、この段階で酒を搾ることは、通常の酒造りでは行われない。

だが震災で醸造設備が失われ、仕込み途中の酒母を通常の工程で仕上げることは、もはやできなかった。そこで選ばれたのが、それをそのまま搾るという方法だった。教わったとおりの造りではない。設備を失った蔵人たちが、目の前に残ったものを酒にするために下した、やむを得ない判断だった。

強すぎる酸が、骨格になった

こうして生まれた原酒は、日本酒の一般的な範囲を大きく外れていた。日本酒度は−30、酸度は5.1。あまりに強い酸と濃密さのため、当初は商品化には向かないとされた。ところが、この規格外の数字こそが、のちに大きな意味を持つことになる。強い酸と豊かな成分が、長期熟成に耐える骨格になったと、蔵元は説明している。

原酒は神戸の蔵のタンクで、常温のまま眠り続けてきた。熟成期間は25年を超え、いまでは30年あまりになる。時間のなかで酸の角は取れ、酒は深い琥珀色に変わった。公式のテイスティングノートには、カラメルやビターチョコレート、ドライフルーツ、シナモンやクローブを思わせる複層的な香りが記されている。思いがけない事情から生まれ、のちに評価されたという点では、貴腐ワインやアイスワインの誕生譚にも通じる。

外からの評価

この酒質は、やがて日本酒の世界の外からも評価されることになる。シャンパーニュの名門ドン ペリニヨンの元醸造最高責任者、リシャール・ジョフロワ氏は、公式記事のなかで『現外』を評し、熟成の深い印象とは裏腹に、乳酸由来の甘酸っぱさとミネラル感が酒質を構成している点を特徴として挙げている。

品評会でも、熟成酒の部門で評価を得てきた。世界最大級のワイン品評会『インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)』では、2024年にゴールドメダルを、2026年に銀メダルを、いずれも熟成酒を対象とする部門で受賞した。フランスのソムリエらが審査するKura Masterでも、2022年に古酒部門で金賞を受賞した。震災の年に生まれた原酒は、30年を経て、国際的な品評会で評価される存在になった。

「現実の外」という名

『現外』の名は、「現実の外」を意味する。商品化したのは、高級日本酒ブランドSAKE HUNDREDを運営する株式会社Clearである。仕込みの年は1995年のまま変わらない。熟成だけが、一年ごとに深くなっていく。

名は「現実の外」。だが、その出発点にあったのは現実そのものだった。壊れた蔵と、残された一つのタンクと、それを捨てなかった人たち。30年あまりの時間が、あの朝に生まれた酒を、まったく別の何かに変えた。


This article is intended solely to explore the brewing history and cultural heritage of Sawanotsuru Brewery and the “SAKE HUNDRED GENGAI” brand, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับประวัติการผลิตและมรดกทางวัฒนธรรมของโรงสาเก Sawanotsuru และแบรนด์ “SAKE HUNDRED GENGAI” เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ


“The Philosophy of Bespoke” / “A Sake-Brewing Craft That Turns Amber in a Snow Cellar” / “Time as an Ingredient” / “Will Aged Sake Unveil a New Dimension of Japanese Sake in 2026?” / “酒蔵を持たずに、専門性をつなぐ”


Related Product(s)

SAKE HUNDRED GENGAI / SAKE HUNDRED RAIHI

Discover the culture behind every bottle

We share brewery stories, tasting notes and the craft of koji & fermentation — for educational and cultural purposes only.

เราถ่ายทอดเรื่องราวจากผู้ผลิต บันทึกรสชาติ และศาสตร์แห่งโคจิและการหมัก — เพื่อการศึกษาและวัฒนธรรมเท่านั้น

Follow on Instagram
Facebook

Age Verification

This website contains information about alcoholic beverages and is intended for audiences aged 20 and above. Please confirm your age to continue.