Drink
熱帯の地下3メートル
タイのシングルモルトとジャパニーズウイスキー

土地の違いは、ウイスキー造りにどう表れるのだろうか。
1923年、日本初のモルトウイスキー蒸溜所となる山崎蒸溜所の建設が始まった。サントリーによれば、創業者の鳥井信治郎はスコッチの製法を手本にしながら、スコットランドとは地形や気候の異なる土地を選んだ。
それから約1世紀。タイのプラカーン蒸溜所にも、土地の気候を踏まえて造り方を考える一例がある。
ワールド・ウイスキー・アワードでのプラカーン
タイのカンペーンペット県にあるプラカーン蒸溜所のシングルモルト「プラカーン セレクトカスク」は、2025年と2026年のワールド・ウイスキー・アワードで、タイのシングルモルトの熟成年数表示なし部門でカテゴリー・ウィナーに選ばれた。味わいの審査はブラインド方式で行われる。
セレクトカスクは、カンペーンペットにかつてあった三重の防壁にちなんで名づけられた「トリブーラ・シリーズ」の一つだ。日本の正規輸入代理店は、その香味にパイナップルや蜂蜜を思わせる要素を挙げている。
熱帯での樽熟成
温度と湿度は、熟成中に樽の中で起こる変化に影響する。サントリーは、山崎での温度と湿度の変化を、同蒸溜所の樽熟成を特徴づける条件の一つに挙げている。
高温多湿の環境では、蒸発も考慮すべき要素になる。熟成中に樽から蒸発して失われる分を「天使の分け前」と呼ぶ。その量は温度や湿度などの条件によって変わる。
プラカーンは、高温多湿の環境で樽熟成を管理するため、地下の熟成庫を使う。日本の正規輸入代理店である三陽物産によると、熟成庫は地下約3メートルに設けられ、壁に沿って盛土が施されている。
「プラカーン」はタイ語で防壁や砦を指す。かつてカンペーンペットの町を囲んでいた城壁にちなんだ名前だ。
熟成年数表示が伝えること
ワールド・ウイスキー・アワードは、プラカーン セレクトカスクを「ノンエイジステートメント(NAS)」に分類している。ラベルに熟成年数を記していないという意味だ。
熟成年数が示すのは、樽で過ごした時間だ。気候の異なる土地の熟成を比べるには、使った樽や保管環境についても知る必要がある。
日本にも熟成年数を表示しないウイスキーがある。たとえばニッカは、シングルモルトの余市と宮城峡を、それぞれ熟成年数を表示した製品と、表示しない製品の両方で展開している。
バンコクからの視点
バンコクの飲食や接客の現場では、タイと日本の事例が、造られる場所から熟成環境まで、蒸留酒の製法を話す手がかりになる。
山崎とプラカーンは、それぞれの土地の条件に応じた熟成の例だ。サントリーは山崎の温度と湿度の変化に着目し、プラカーンは高温多湿の環境で地下の熟成庫を使う。
日本では、日本洋酒酒造組合が2021年に「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する自主基準を定めた。この基準は製造と表示に関する条件を定めている。
熟成庫の環境、樽の選び方、ラベルの言葉。それぞれに、アジアで造られるウイスキーの一面が表れている。(Mr. Bacchus)
本記事は、プラカーン蒸溜所とプラカーンの蒸溜技術および文化的背景を紹介するためのものである。酒類の宣伝や飲酒の推奨を目的とするものではない。20歳以上の方を対象としている。飲酒は節度を守ること。
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