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Perspectives

物語がインフレを起こす前に――確かめておくべきこと

「量ではなく物語で選ばれる」。バンコクの飲食業界でも、この言葉を記事や会話で何度も見かけるようになった。どこで作られたか。作った人はどんな考えを持っているか。水はどこから来ているか。こうした一杯の背景を語ることが、酒を選ぶ理由として大切にされるようになってきた。

この変化は、業界の調査とも合っている。『Urban List』という媒体がまとめた2026年のアジアの飲食トレンドには、こう書かれている。低アルコールやノンアルコールの飲み物は、もう「我慢して選ぶもの」ではない。「自分から選びたいもの」になった、と。飲む量が減れば、その分、その一杯を選ぶ理由を、量以外のところに求める必要が出てくる。こうした考え方は、すでに多くの店が実践し始めている。

物語が価値を持つと、物語は増える

ここで、見落とされやすいことがある。物語に価値が出てくると、語られる物語の数そのものが増えていく、ということだ。

経済で言うインフレとは、物価が継続的に上昇する状態を指す。ここではそれになぞらえて、物語が増えるほど、一つひとつの希少性や重みが薄れていく状態を「物語のインフレ」と呼んでいる。

背景を語ることが、選ばれる理由になるとする。すると、実際よりも豊かな背景を持っているように見せたい、という気持ちも同時に生まれる。これは、特定の店や業界を責めている話ではない。価値のあるものは、供給が増えていく。それだけのごく普通の出来事である。

問題は、増えた物語のすべてが、同じくらいきちんと確かめられているとは限らないことである。誰かから聞いた話が、そのまま事実として語られることがある。一つのエピソードが、確かめられないまま、何度も繰り返し使われることがある。誰かの推測が、伝わっていくうちに、いつの間にか事実として扱われることもある。こうしたことは、悪気なく起きる。

語る前に、確かめられているか

そうだとすれば、これからの飲食店にとって大事なのは、物語を持っているかどうかだけではない。その物語を、どこまで確かめてから語っているか、という点である。

具体的には、三つのことを確かめるとよい。

一つ目は、産地や造り手の情報を、造り手本人や公式の発表で確認すること。誰かから聞いた話のまま使わない。

二つ目は、確認できた事実と、伝聞やお店独自の解釈とを、はっきり分けて話すこと。「そう言われている」と「確認した」は、重さの違う言葉である。

三つ目は、スタッフ自身が出典や確認経路を説明できない情報は、メニューや会話に出さないこと。誰も確かめていない情報が、そのまま独り歩きするのを防ぐためである。

実際にやることとしては、使う情報に、どこで確認したか(公式サイト、メーカーの資料、造り手への直接確認など)と、確認した日を記録しておく。確認できていない話は、事実だと言い切らない。これだけでよい。

物語が増えるほど、どこまでが確かめられた事実で、どこからが解釈や考え方なのかが、聞き手にはわかりにくくなる。この三つのことは、地味に見えるかもしれない。だが、物語の数が増えていく今だからこそ、この地味な確認作業が、伝える内容の信頼を支えている。

日本酒・焼酎が、もともと持っているもの

日本酒や焼酎は、この確認が比較的しやすい酒でもある。米や芋といった原料、麹の使い方、水の由来、蔵元の歴史。こうした情報は、蔵元やメーカーが自分で発表していることが多い。日本酒であれば、精米歩合なども含まれる。

ただし、発表している範囲や、最後に更新した時期は、造り手によって違う。確認しやすい場合があるというだけで、確認しなくてよい、ということにはならない。

とはいえ、この「確認しやすさ」は、黙っていても活かされる強みではない。公式の資料を確認せず、聞いた話をそのまま使えば、同じ問題がここでも起きる。確認しやすいことと、実際に確認することは、別の話である。

静かな部分を、静かなままにしておく

KOUJI ALCHEMIST by salon du japonisantが麹と発酵について話すときも、確認できた範囲だけを話すようにしている。語れることを大げさに見せるより、語れないことは語れないまま、静かに置いておく。そのほうが、結果として、伝える内容への信頼を長く保つことができる。

物語に価値がある時代は、悪いことばかりではない。ただし、物語の数が増えるほど、その中身を確かめる手間も増えていく。バンコクの飲食店にこれから問われるのは、より豊かな物語を語れるかどうかではない。語っている物語を、実際にどこまで確かめているか、である。


This article is intended solely to explore the importance of factual verification in narrative-driven marketing within Asia’s F&B and bar culture, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับความสำคัญของการตรวจสอบข้อเท็จจริงในการเล่าเรื่องเพื่อการตลาดในวงการอาหารและเครื่องดื่มและวัฒนธรรมบาร์แห่งเอเชีย เพื่อเป็นข้อมูลความรู้เท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ


“主流の前提を一つ外す――小さな酒販店が生き残るための知的動作”

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