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技術の隣に、造りの哲学を測るものさし――SAKE COMPETITION 2026「Modern Natural」部門

技術の隣に、造りの哲学を測るものさし――SAKE COMPETITION 2026「Modern Natural」部門

技術の隣に、造りの哲学を測るものさし――SAKE COMPETITION 2026「Modern Natural」部門

日本酒のコンクールが長く重んじてきたのは、酒造りの精緻さと、完成度の高さだった。米をどれだけ磨き、どれだけ澄んだ酒に仕上げるか。純米大吟醸部門は、そうした技術を象徴する部門である。2026年のSAKE COMPETITIONでは、それと並んで、技術とは別のものさしを掲げる部門があった。「Modern Natural(モダンナチュラル)」。測るのは、完成度だけではない。造りの哲学である。

「哲学」を測る部門

「Modern Natural」が光を当てるのは、添加物を極力使わない造り、地域との結びつき、蔵元の考え方の一貫性といった、数値にしにくい要素だ。純米大吟醸部門が「どれだけ精緻に造れるか」を問うのに対し、この部門は「どんな価値観で造るか」を前面に置く。原料づくりから瓶詰めまで、蔵元の考えが一本につながっているか。順位をつけるコンクールが、点数だけでは捉えきれないその一貫性まで評価軸に含めている。そのこと自体に、いまの日本酒の一面が表れている。

Modern Natural部門の最高位は、宮城の川敬商店の「たちばなや 純米吟醸」だった。同じ表彰式で、純米大吟醸部門の頂点には広島の相原酒造の「雨後の月」が立った。純米大吟醸部門は精緻な造りと完成度を、Modern Natural部門は造りの背景を、それぞれ前面に置く。異なる観点のものさしが、同じ壇上に並んだ年である。

そして「たちばなや 純米吟醸」は、日本航空(JAL)の「JAL空飛ぶSAKE賞」に選ばれ、国際線への搭載が決まった。造りの哲学を測る部門で頂点に立った酒が、同じ年に海外との新しい接点を得た。一つの評価軸が市場とつながり始めた例である。

火災の前に仕込まれた、一本

評価が「蔵の格」ではなく「酒そのもの」に向かうことを、はっきり示した蔵元もある。福島の笹正宗酒造だ。2026年6月1日に火災が起き、国の登録有形文化財だった母屋や酒蔵など3棟と仕込んでいた清酒の多くを失った。その9日後の授賞式で、火災の前に仕込まれ、審査に出品された「ささまさむね 特別純米」が、純米部門で第2位に選ばれた。評価されたのは、蔵の構えでも逆境でもなく、出品された酒そのものである。酒造りの本質が宿るのは、建物ではなく、人と技術のなかである。

バンコクにとっての意味

この評価軸の広がりは、バンコクにも関わる話である。自然派ワインや産地の物語に関心を寄せる客にとって、「Modern Natural」という部門は、日本酒の造りを知る入口になる。Modern Natural部門での第1位と、JAL国際線への搭載という二つの実績が重なったことは、日本酒の造りを紹介するときの足がかりになる。こうした海外展開の背景には、国内市場が縮むなかで輸出が中長期的に伸びてきたという構造もある。2024年に日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことも、海外で日本酒を「学ぶ価値のある文化」として受け止める下地になっている。

技術や完成度を測ってきた評価軸に、造りの哲学を映すものさしが加わった。どちらが上という話ではない。評価する言葉が増えれば、選ぶ側の視点も、造る側の狙いも変わる。評価に用いられる言葉が変われば、造られる酒も変わっていく。SAKE COMPETITION 2026が残したのは、順位表よりもむしろ、その一点である。


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