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「常温保存できる」は、置き場所の条件も含む—火入れの回数と冷暗所という前提

日本の酒販店やスーパーでは、多くの日本酒が冷蔵ケースではなく、ふつうの棚に並んでいる。日本の酒情報サイトで2026年9月に更新された保存方法の解説は、こうした酒の多くは2回の火入れを経て品質を安定させており、常温で保存できると説明している。

では、同じ一本がバンコクに届いたとき、「常温保存できる」という説明はそのまま通用するのだろうか。それを考えるには、まず「常温」という言葉が何℃を指すのかを確かめる必要がある。

「常温」が指す温度

同じ解説を読み進めると、常温保存には条件が付いている。直射日光や蛍光灯の光が当たらず、温度の変化が少ない冷暗所に置くことである。その冷暗所とは、一般に15℃前後、あるいはそれ以下の涼しく暗い場所を指し、代表的な置き場所として床下収納が挙げられている。

つまり、この解説でいう「常温保存」は、部屋のどこに置いてもよいという意味ではない。日本の住まいのなかで見つけられる、涼しく暗い場所に置くという条件までを含む言葉である。しかも、この解説では、室温が高くなる夏場などにその環境を保てないときは、冷蔵庫に移すよう勧めている。日本でも、常温保存の条件を満たせない時期があるということだ。

「常温保存できる」という一文は、酒の性質と置き場所の条件という二つの要素を、まとめて表していることになる。

火入れの回数が分けるもの

では、酒の性質のうち、保存方法に関わる違いは何を目安に分けられるのか。この解説では、「火入れ」と呼ばれる加熱の回数が、その目安になっている。火入れとは、搾ったあとの酒を加熱して殺菌し、酵素の働きを止める工程だ。一般的な日本酒は、貯蔵の前と出荷の前の2回加熱される。一度も加熱しない酒は「生酒」、出荷するときだけ加熱する酒は「生貯蔵酒」、貯蔵の前だけ加熱する酒は「生詰め酒」と呼ばれる。

解説は、生酒について冷蔵を必須とし、保管温度は5℃以下が望ましいとしている。生貯蔵酒や生詰め酒は常温でも保存できるとしながら、繊細な香りを損なわないよう冷蔵を勧めている。吟醸酒や大吟醸酒、できたての新酒についても、冷蔵が勧められている。そのうえで、熟成を目的としない限り、理想はすべての日本酒を冷蔵で保存することだとしている。常温で保存できるとされる酒であっても、涼しい場所に置くことが前提になっている。

条件が崩れる場所で

バンコクでは、このうち置き場所についての前提が成り立ちにくい。年間の平均気温は資料によって異なるが、およそ28〜30℃である。一年でいちばん涼しい12月でも、月平均気温は約26〜28℃となる。これは、東京でいちばん暑い8月の平均気温(1991〜2020年の平年値26.9℃)と同じくらいである。

ここで「常温保存できる」という説明をそのまま受け取ると、15℃前後の冷暗所を前提としている言葉を、実際の置き場所の温度を確かめないまま当てはめることになる。説明の文言も、瓶の中の酒も変わっていない。変わったのは、その言葉が前提としている置き場所のほうである。

同じ解説は、日本酒は高温や急な温度変化によって品質が劣化しやすいと説明している。日本の涼しい場所でさえ冷蔵が勧められている生貯蔵酒や生詰め酒であれば、なおさら置き場所の温度が問われる。バンコクの同じ店でも、冷房が稼働している営業時間中と、冷房を止めた閉店後とでは、棚の温度が同じとは限らない。


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“火入れの回数とタイミングで、日本酒の呼び名は変わる――秋の酒「ひやおろし」の正体” / “From 5°C to 55°C” / “Sake Storage in Bangkok: Product-Specific Handling”

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