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日本酒が「次の10年」を懸ける地図──ラテンアメリカ・中東・アフリカという新フロンティア

日本酒が「次の10年」を懸ける地図──ラテンアメリカ・中東・アフリカという新フロンティア
2025年度の日本酒輸出は、過去最高を更新した。輸出額は前年比6%増、数量ベースでも約3.35万キロリットルと前年比8%増となった。輸出先は過去最多の81カ国・地域に達した。
数字だけ見れば順調な成長に見える。だが、地図を広げてみると、この成長の内側で起きている構造変化に気づく。中国と米国という二大市場への依存構造が、静かに、しかし確実に変わり始めている。
二大市場の「天井感」
2025年度の輸出金額1位は引き続き中国(前年比13.9%増で過去最高水準を更新)、2位は米国(前年比3.5%減)。この2市場で全体の半分以上を占める構図は変わらない。
ただし、ここ数年の動きを追っている者なら、その天井感を肌感覚で知っている。中国市場は政策リスクと景気減速の影響を受けやすく、米国市場には、ドル高の影響や関税をめぐる議論が常につきまとう。2024年に米国向け輸出が前年比125.9%増を記録した反動もあって、2025年は調整局面に入った。
一方で、EU全体では過去最高を更新し、国別でもフランスや韓国が記録を塗り替えている。日本酒の輸出地図は、明らかに「多極化」のフェーズに入った。
ラテンアメリカ:5年で288%増、4倍近い成長の裏側
この多極化のなかで、もっとも劇的な変化が起きているのがラテンアメリカである。
過去5年間で輸出額は288%増加した。市場規模自体はまだ小さいが、輸出先の国数は初めて10カ国に到達した。この数字が意味するのは、ブラジルやメキシコといった一部の国だけでなく、地域全体に日本酒の認知が広がり始めたということである。
特に注目すべきはブラジルの動きである。2025年11月、ブラジルのワインプロフェッショナルが日本酒造組合中央会の招待で東北地方の酒蔵を巡る研修ツアーに参加した。参加者の一人は「日本酒の味覚プロファイルと文化的な象徴性は、ブラジルの消費者に強く響く可能性がある」と語っている。
この言葉は外交辞令ではない。ブラジルには世界最大の日系コミュニティ(約200万人)が存在し、サンパウロの日系街リベルダージ地区には日本食レストランが集積している。さらに近年、ペルー発祥の「ニッケイ料理」(日本料理と南米料理を融合させたガストロノミー)が世界的なブームとなっており、そのペアリングの相手として日本酒が再発見されつつある。
ソムリエの間では、すでに実験的な動きが始まっている。ラテンアメリカの食文化と日本酒の特性を掛け合わせる試みが、各地で広がりつつある。ラテンアメリカにおける日本酒は、「エキゾチックな輸入品」から「ガストロノミーを構成する選択肢」へと位相を変え始めている。
中東:ドバイが切り拓く「ハラールの壁」の向こう側
中東・アフリカ地域全体への日本酒輸出は、2024年に50万リットルを突破した。その中心となっているのがUAE(アラブ首長国連邦)で、地域全体の60%以上を占める。
ドバイとアブダビでは、日本酒を提供する飲食店が2024年だけで19%増加した。高級ホテルのファインダイニングと日本食フュージョンレストランが主な提供チャネルである。
中東市場の特殊性は、ハラール(イスラム法に基づく食の規定)の存在にある。アルコール飲料は多くの中東諸国で制限されているが、ドバイのような国際都市では「ライセンス制」により外国人居住者や観光客向けに提供が認められている。この「窓」が、日本酒にとっての市場への入口となっている。
興味深いのは、ドバイにおける日本酒の位置づけである。ワインやウイスキーが「すでに知られた選択肢」であるのに対し、日本酒は「知る人ぞ知るプレミアム体験」として差別化されている。ドバイの富裕層マーケットにおいて、日本酒は単なる飲料ではなく、「日本文化のラグジュアリー体験」の一部として消費されている。
アフリカ:最後のフロンティアで芽吹く種
アフリカ大陸への日本酒輸出は、統計上はまだごく小さな規模にとどまっている。だが、南アフリカでは2024年に小売ベースの日本酒販売が12%増加したという報告がある。テイスティングイベントやプレミアム日本酒のプロモーションが、少しずつ認知の土壌を耕している。
ケープタウンやヨハネスブルグのファインダイニングシーンでは、日本食レストランの増加とともに日本酒の存在感が高まりつつある。南アフリカはワイン生産国でもあり、ソムリエをはじめとするワインプロフェッショナルの層が厚い。彼らが日本酒に関心を示し始めていることは、長期的な市場形成にとって重要な兆候である。
「81市場」の意味:量から質への転換点
日本酒の輸出先が81カ国・地域に達したという事実は、単に「たくさんの国に売っている」という意味ではない。
かつて日本酒の海外市場といえば、日本食レストランの延長線上にあった。寿司屋のカウンターで冷酒を注文する。日本酒は、その文脈の中でしか存在しなかった。だが今、ラテンアメリカではニッケイ料理の文脈で、ドバイではラグジュアリー体験の文脈で、南アフリカではワイン文化の延長線上で、それぞれ異なる「入口」から日本酒が受容され始めている。
これは、日本酒が「日本食に従属する飲料」から「独立したカテゴリー」へと成長しつつあることの証左である。ワインがフランス料理だけのものではなくなったように、日本酒もまた、和食の枠を超えて世界の食卓に居場所を見つけ始めている。
バンコクから見える風景
タイは日本酒の輸出先として世界第12位。東南アジアではシンガポールに次ぐ第2位の市場である。バンコクでは、日本食レストランだけでなく、フレンチ、イタリアン、タイ料理のファインダイニングにも日本酒が浸透し始めている。
タイ市場の関係者がラテンアメリカや中東の動きから学べることは多い。具体的には、「日本酒=日本料理」という固定観念を解体し、タイ料理やインターナショナル・キュイジーヌとの組み合わせの中で日本酒を再提案することである。これはすでにバンコクの一部のバーやレストランで始まっている実験であり、その流れは今後さらに加速するだろう。
81の市場に広がった日本酒の地図。その最前線は、もはやニューヨークやパリだけではない。サンパウロ、ドバイ、ケープタウン。これらの都市で今起きている小さな変化が、日本酒の「次の10年」を形づくることになる。
This article is intended solely to explore the structural transformation and multi-polar expansion of the global sake export market, particularly the rise of Latin American, Middle Eastern, and African frontiers, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อ นำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับการเปลี่ยนแปลงเชิงโครงสร้างและการขยายตลาดส่งออกสาเก
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