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米焼酎の「華やかな香り」は、ある蒸溜技術が生んだ発明だった
常圧と減圧、二つの道が分けた米の酒

米だけを原料に、米麹で仕込む。米焼酎と聞けば、素朴で穏やかな酒を思い浮かべる人が多いだろう。
だが実際の米焼酎には、驚くほど違う表情がある。一方には、米の旨味がふくよかに広がる重厚なタイプ。もう一方には、無色透明で、まるで吟醸酒のような華やかな香りを放つタイプ。同じ「米焼酎」という言葉の中に、なぜこれほどの開きがあるのか。鍵を握るのは、原料でも産地でもなく、蒸溜という工程に隠れた一つの選択である。
蒸溜の「圧力」が、香りを決める
本格焼酎(乙類焼酎)は、単式蒸溜機という昔ながらの装置で一度だけ蒸溜される。このとき、蒸溜する空間の圧力をどう設定するかで、酒の表情が大きく変わる。
通常の気圧のまま蒸溜する「常圧蒸溜」では、もろみが高い温度で沸き立つ。その熱で、香りの軽い成分も重い成分もいっしょに立ちのぼり、米由来の濃い旨味やコクが酒に移る。一方、装置の中の空気を抜いて気圧を下げる「減圧蒸溜」では、もろみが低い温度で沸く。高い山の上では気圧が低く、水が100℃より低い温度で沸いてしまう。あの現象を、装置の中で人工的に起こしているのである。低い温度で蒸溜すると、雑味のもとになる重い成分が抑えられ、果物や花を思わせる軽やかな香りの成分が、より前面に出やすくなる。同じもろみから、まったく違う酒が生まれるのだ。
1970年代、米焼酎が「香り」を手にした
この減圧蒸溜が焼酎づくりに導入され始めたのは1970年代前半であり、その後、昭和50年代以降に広まっていった。それは、米焼酎が新しい表現を手に入れた瞬間でもあった。
象徴的な一本が、熊本・人吉球磨で四百年の歴史を持つ鳥飼酒造の「吟香 鳥飼」だ。吟醸酒用の米を精米歩合58%まで磨き(米の四割以上を削り)、減圧蒸溜で仕上げたこの焼酎は、無色透明でありながら、吟醸酒のような香りを放つ。ちょうど日本酒の世界で吟醸ブームが起きていた時代と重なり、米焼酎もまた「香りを特徴とする酒」という新しい地平を切りひらいた。この技術は、米焼酎を地元の素朴な酒という枠から押し広げ、繊細な香りによって海外の人にも説明しやすい酒へと、その表現の幅を一気に広げたのである。
「常圧」が守り続けた、もう一つの価値
では、減圧がすべてを塗り替えたのかといえば、そうではない。
熊本の球磨地方でつくられる米焼酎は「球磨焼酎」と呼ばれ、国税庁の地理的表示に指定され、WTO(世界貿易機関)のTRIPS協定の枠組みでも保護されている、由緒ある産地ブランドである。その一方で、常圧蒸溜による米の旨味が濃く残る伝統的な酒質も、今なお大切に守られている。1900年創業の高橋酒造のように、長く地元に根ざしてきた蔵の存在も大きい。減圧には華やかさがあり、常圧には重厚さがある。二つの道は、どちらかが正解なのではなく、米焼酎という酒の幅そのものを形づくっている。
バンコクで、米焼酎を理解するために
バンコクで米焼酎を理解するうえでも、この視点は一本を深く知る手がかりになる。
ラベルや資料に「減圧」とあれば、軽やかで香り高い酒質設計である。「常圧」とあれば、米の旨味を生かした厚みのある酒質設計である。たったその一語が、造り手の意図を物語っている。米焼酎は素朴なだけの酒ではない。原料の米に、麹の力に、そして蒸溜という最後の選択に、造り手の哲学が幾重にも織り込まれている。その奥行きを知ることこそ、この酒を理解する確かな入り口になる。
This article is intended solely to explore the distillation techniques and cultural heritage of Japanese rice shochu (kome-jochu) and its producers, and does not aim to promote or encourage the consumption of alcohol. / บทความนี้จัดทำขึ้นเพื่อนำเสนอข้อมูลเกี่ยวกับเทคนิคการกลั่นและมรดกทางวัฒนธรรมของโชชูข้าวญี่ปุ่น (โคเมะโจชู) และผู้ผลิตเท่านั้น มิได้มีเจตนาเพื่อส่งเสริมหรือโฆษณาเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ สำหรับผู้มีอายุ 20 ปีขึ้นไป โปรดดื่มอย่างรับผิดชอบ
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